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190:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/09/27(木) 00:14:39.66 ID:Ni0AA1zQo

「悪い」

 叔母さんが笑いを引っ込めて言った。

「父さんと母さんは今日は帰ってくるのか」

 僕は何だかまだ少し慌てている様子の妹に聞いた。

「今夜は帰れないって」

「そうか。せっかく叔母さんが来てくれたのにね」

「いいって。あたしは久しぶりに奈緒人君の顔を見に来ただけだからさ」

 叔母さんはそう言って笑った。

「でもどうしようか。あたしもさっき帰ったばかりで夕食の支度とか何にもしてないん
だ」

 妹が少しだけ困ったように言った。

 こいつが突然いい妹になる路線を宣言してから数日たっていたけど、やはり妹のこの手
の発言には違和感を感じた。そもそも両親不在の夜に明日香が食事の支度をすることなん
てもう何年もなかったのだし。

「叔母さんも夕食はまだなの?」

 明日香が聞いた。

「うん。ここに来れば何か食わせてもらえるかと思ってさ。まさか姉さんがいないとは思
わなかったから当てがはずれちゃったよ」

「そんなこと言ったって電話とかで確認しない叔母さんが悪いよ。だいたい叔母さんほど
じゃないかもしれないけど、毎年年末はほとんど家にいないよ。ママもパパも」

 明日香の言ったことは本当のことだった。父さんと母さんはお互いに違う会社に勤めて
いるけど業種は一緒だった。そしてそれが二人の馴れ初めだったということも、昨年のあ
の告白の際に聞かされてもいた。

「何で年末にそんな忙しいんだろうな。クラッシック音楽雑誌の編集部なんて暇そうだけ
どな」
 叔母さんがのんびりとした声で言った。「こう言っちゃ悪いけど、あたしのいる編集部
みたいなメジャーな雑誌を製作しているわけじゃないしさ」

「まあ、業界なりの事情があるんじゃないの」
 明日香が訳知り顔で言った。「それより叔母さん、夕食まだならどっかに連れて行って
よ。あたしおなか空いちゃった」

 明日香は昔から玲子叔母さんと仲が良く、お互いに遠慮せずに何でも言えるのだ。僕も
あの夜の両親の告白までは明日香同様、あまり叔母さんに遠慮しなかった気がする。叔母
さんにはそう言った遠慮を感じずに接することができるような大らかな雰囲気が備わって
いたからだ。

 でも実の叔母と甥の仲じゃないことを知った日以降、僕は叔母さんには心から感謝して
はいたけど、前のように無遠慮に何でも話すことはできなくなってしまっていた。


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