242:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/02(火) 00:10:25.67 ID:HzCbppwJo
冬休みに入ってもパパとママはほとんど家にいることがなかった。まあ普段から両親が
いないことには慣れていたのだけど、休み中に両親がいないと昼間の食事とかも考えなけ
ればならない。いい妹になるつもりだったあたしだけどさすがに毎日三食用意するのは無
理だった。そもそも休みの朝なんて朝食をとる気にすらならない。
それでも兄貴が朝食を食べるのならその支度を兄貴自身にさせる気はなかった。無理を
してでも早起きして簡単な献立くらいは用意する覚悟はあったのだ。あたしは休みに入る
前の晩にそのことを兄貴に聞いてみた。
「せっかく休みなんだし朝ごはんなんか食うより寝てたいな」
兄貴はあっさりそう言った。考えてみればゲームとか深夜アニメの視聴とかが唯一の趣
味の兄貴ならそう言うだろう。それであたしは安心した。
もう一つの心配は兄貴と奈緒のことだった。あたしから見ても兄貴は既に相当奈緒に夢
中になっているように見えた。平日は毎朝奈緒と待ち合わせして一緒に登校しているし、
土曜日は奈緒のピアノのレッスンが終った後に一緒に過ごしているらしいし。
普段ですらそんな有様なのだから休みに入ったら毎日でも一緒に過ごすのではないか。
兄貴と奈緒の接近を食い止めたかったあたしにはそれが心配だった。
ところが意外なことに休み中の兄貴は、ほとんど奈緒と一緒に出かけようとする様子は
なかった。理由はともかくこれはチャンスだった。
幸いなことに有希の家はあたしたちの家に近い場所にあるのだし、あたしは渋る兄貴を
誘って、毎日買物の荷物持ちをさせることを口実に外に連れ出すようにした。
いくら鈍感な兄貴でも何か様子がおかしいことには気がついていただろうと思う。あた
しと兄貴が駅前に買物に行くたびに、途中で有希が合流するのだから。
有希に対してはあまりストレートな攻勢に出るのは危険だったから、あたしは兄貴に会
わせたいからではなくあたしが有希と会いたいからという理由で有希を誘っていた。
あたしの見るところでは有希は間違いなく兄貴のことを男として気にしていた。でも奈
緒の親友である有希がそれを素直に認めるわけはないのだ。だからあたしは有希が罪の意
識なく兄貴と会えるように、あたしと有希がおしゃべりする場所に兄貴が居合わせている
という状況を作り上げることにしたのだった。
そんな危うい顔合わせも回数を重ねるにつれ自然な集まりになっていくみたいで、有希
はもともとあまり物怖じせず人見知りもしない性格だし、口下手で根暗の兄貴でさえ何度
か一緒に過ごしているうちに有希とも打ち解けて話せるようになっていった。
奈緒に遠慮しているのか相変わらず有希のことを他人行儀に「ユキさん」と呼んではい
たけれど。
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