245:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/02(火) 00:17:45.08 ID:HzCbppwJo
「まあ、何が言いたいかと言うとさ。中二の冬休みに毎日デートしている時間なんて奈緒
ちゃんにはないってこと。別にお互いに会いたくないわけじゃなくて、奈緒ちゃんだって
ナオトさんと会いたいと思ってはいるだろうけど」
「そんなピアノだけの生活をしている子たちって彼氏とデートしたりする暇なんかないんじゃないの?」
「よくわからないけど、普通の子たちみたいに自由にデートしたりは絶対無理だと思う」
この時有希の表情が少し暗くなった。「まして奈緒ちゃんはお母さんの期待も背負ちゃ
ってるから・・・・・・奈緒ちゃんのお母さんって奈緒ちゃんに彼氏がいるなんて思ってもいな
いんじゃないかなあ」
あたしもだんだんと奈緒の事情がわかってきた。
「だから、奈緒ちゃんって相当苦労して時間をやりくりしてナオトさんと会っているんだ
と思うんだ。それだけナオトさんのことが好きなんだと思う」
その時あたしは別な疑問を思いついた。
「あれ? でもそうだとしたらさ。何で有希は毎日あたしや兄貴に付き合ってくれてる
の? 有希だって奈緒ちゃんと同じでピアノ漬けになってなければいけないんでしょ?」
「あたしは別に・・・・・・ピアニストになろうなんて思っていないもの」
少しだけ寂しそうに有希は言った。
「だってこないだのコンテストで二位に入賞したんでしょ? あとパパの記事で将来は奈
緒ちゃんより期待できるとかって」
「ううん。あたしはピアノは何となく続けているだけだし、両親も別に音楽関係者でもな
んでもないしね。気楽にやっているだけだよ」
有希は笑ってそう言ったけど、有希のその時の寂しそうな表情はあたしの印象に強く残
った。あたしが本当に決心したのはこの時だったと思う。そう決めたとき、再びあの胸が
締め付けられるような寂しさがあたしを襲った。でももう迷っている場合ではなかった。
「ピアノと彼氏とどっちかを選べって言われたら有希ちゃんはどうする?」
「何の話?」
「だからさ。ピアニストになりたい子って小学校の頃から生活のほぼ全てをピアノに捧げ
ているんでしょ?」
「少し大袈裟だけどそういうところはあるよね」
「そういう大切な時期にさ、彼氏とピアノと両立できなくなったとしたらどうするかって
聞いてるの」
「あたしは別にそこまでピアノに思い入れないし彼氏を選ぶかな」
「じゃあ奈緒ちゃんは?」
「え?」
「奈緒ちゃんはそうなったら兄貴とピアノどっちを選ぶと思う?」
「そんなのわからないよ。両立できるかもしれないし」
「笑ってくれても馬鹿にしてくれてもいいけど。あたしにとっては奈緒人はたった一人の
兄貴なの。有希ちゃんには言ってなかったけど兄貴はこれまでいろいろ事情があって寂し
い生活をしてきたの。この上本当に好きな子にそんな理由で振られたら兄貴が壊れちゃう
よ」
この辺であたしはもうこれが演技なのか本音なのか訳がわからなくなっていて、最後の
方は期せずして涙声になってしまっていた。
涙を払うついでに有希を見ると彼女は驚いた様子であたしを見ていた。
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