278:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/06(土) 22:59:39.41 ID:XUDIxlOTo
叔母さんは僕の隣に座って初めて見た細身の赤いフレームの眼鏡を外した。眼鏡を
外すことで仕事のオンとオフを別けているのかもしれない。
「叔母さん仕事いいの?」
明日香が目の前に座った叔母さんに声をかけた。
「よくないけど・・・・・・。それよか姉さんたちは二人とも本当にこの間からずっと帰って来
ないの?」
この間とは叔母さんと父さんが偶然に家で鉢合わせした夜のことを言っているらしい。
「うん。年末には帰るって言ってたけど連絡もないよ」
明日香が言った。「それよかさ。まだ注文してないんだけど。叔母さんも何か食べるで
しょ」
「明日香さあ。親が二人揃って大晦日に連絡もないっていうのに寂しがり屋のあんたが何
でそんなに平気なんだよ」
「だって今年は一人じゃなくてお兄ちゃんもいるし」
「・・・・・・なるほどね。そういうことか」
叔母さんが再び眼鏡をかけた。思っていたより悩んでいる様子のない明日香に安心して、
また仕事に戻る気なのだろうか。僕は一瞬そう思ったけど、叔母さんは明日香からメニ
ューを取り上げただけだった。
「じゃあ何か食べるか。そういえばあたしも昼から何にも食べてないや」
「叔母さんご馳走してくれるの」
どうせ親から預かったお金で支払う気だったくせに、明日香はここぞとばかりに目を輝かせ
て言った。
「相変わらず人の奢りだとあんたは容赦ないな」
注文を終えた明日香に対して再び眼鏡を外した叔母さんが飽きれたように笑った。「そ
ういや年越し蕎麦とか食べたの?」
「うん。お兄ちゃんがコンビニのざる蕎麦も結構美味しいって言うから」
「どうだった?」
「お兄ちゃんに騙された」
「いや、あれはあれで美味いだろうが。それに別に手打ち蕎麦なみに美味しいなんて言っ
てないし」
僕は反論した。
「だったら最初からそういう風に言ってよ。期待して損しちゃった」
「おまえに嘘は言ってないだろ」
「あんたたち、最近仲いいじゃん。まるで昔からの恋人同士みたいよ」
叔母さんが笑って言った。
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