347:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/17(水) 23:35:13.65 ID:jCLNtfmIo
それで、明日香の単純な反応に安堵していたあたしは再び警戒心を取り戻した。ナオト
さんは見た目ほど単純な男の子ではないのかもしれない。
あたしはこれまで呑気で世間知らずだと思っていたナオトさんの印象を改めて見直した。
彼は実の妹から告白されている異常な環境下にあっても、さっきのあたしの失言を聞き逃
していなかったらしい。
いろいろとまだ言うべきときじゃないんじゃないかと思えることではあるけど、この先
の話の成り行きしだいでは仕方ないかもしれない。奈緒の状態を考えると、あたしだって
あまりこの二人には遠慮もしていられないのだ。それにあたしは明日香には貸しこそあれ
借りはないのだし。
明日香なんかどうなろうとあたしの良心は少しも痛まない。
「ナオトさん」
「うん」
彼はあたしが何を言おうとしているのか既に察しているようだった。あたしは奈緒の親
友ということになっていたからそれは不思議なことではない。
「お二人は家族の問題とやらで忙しいみたいだから時間を取らせちゃ悪いよね。だからは
っきりと言うけど、ナオトさんは奈緒ちゃんの彼氏だっていう自覚はあるの?」
ナオトさんは答えなかった。
「有希には関係ないでしょう」
あたしの質問に慌てたように明日香が割って入った。「そんなのはお兄ちゃんと奈緒
の間の話じゃない。何で有希がそんなことを聞くのよ」
「奈緒ちゃんに頼まれたの。今の彼女、ぼろぼろで正直に言って見ていられなかったし。
ナオトさんに突然会えなくなって連絡もなくなってさ。奈緒ちゃんが今どういう状態なの
か、ナオトさんはわかってる?」
「・・・・・・有希にはわからないことだってあるんだよ。お兄ちゃんにだって事情があって」
「ちょっと黙っていてくれるかな」
あたしは冷たく明日香に言った。「あたしは今はナオトさんに聞いているんだけど」
「君には詳しくは言えないけど、もう僕はナオと付き合わない方がいいんだ。その方がナ
オのためでもあると思う」
ナオトさんが言った。
何を自分に都合のいいことを。自分の実の妹の誘惑に負けて明日香の方を選んだという
だけの話じゃないの。あたしはそう思ったけど、ナオトさんの表情には罪悪感はなかった。
むしろもっともどかしく歯がゆくて、それでも運命に諦観しているような表情を浮かべて
いる。これが演技だったら役者並みの演技力だ。
この辺であたしはナオトさんの真の意図がわからなくなっていた。奈緒がナオトさんに
振られたこと自体はあたしにとってはどちらかというと望ましい。奈緒は悩むだろうけど
あたしは奈緒を慰めてあげる自信はあった。
だからここで話を打ち切って、奈緒には残念なお知らせを慎重に話すことにしてもよか
ったのだ。
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