375:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/21(日) 23:09:34.89 ID:i463RUoMo
「ユキさんの話だけどさ、僕たちが本当は兄妹だったこと彼女に話したの?」
お互いに抱きしめあいながら大泣きした後、妙に恥かしくなった僕たちはとりあえず駅
前のスタバに避難した。僕にとってはここは敷居が高い店なのだけど、そんなことを言っ
ている場合ではないし奈緒は気後れする様子もなく店に入って行った。
奈緒ちゃん大丈夫? とか奈緒ちゃんこの人に変なことされてない? とか周囲の生徒
たちは失礼なことを聞いてきた。でも奈緒はまだ涙の残る顔で笑顔を僕に見せた。
「お兄ちゃん走ろう」
奈緒はそう言って僕の手を引いて走り出したのだ。こうして僕たちはスタバの奥まった
席で向かい合って座っていた。
だいぶ落ち着いたところで僕はユキのことを思い出して聞いてみた。
「ううん、まだ話してない。説明すると長くなりそうだし」
それはそうだろうなと僕は思った。まず自分の家の事情を話してそれから僕との偶然の
出会いを話してと考えると、学校の休み時間に気軽に話せることではない。
それに僕と奈緒自身だって兄妹としては再会したばかりで、お互いのことを話し合うの
はまだこれからなのだ。
最後に別れたときのユキの冷たい表情が脳裏に浮かんだ。ユキの誤解がこれで解けるの
ではないかと期待しないではなかったけど、これは奈緒に任せておくしかないようだ。
「それにしても有希ちゃん、やっぱり今日は様子がおかしかったなあ。何か心配事でもあ
るのかな」
「やっぱり彼女は僕のこと怒ってたか?」
「うん。でも感情的にはならずにあたしを慰めてくれた感じ。『あんないい加減な男なん
て奈緒ちゃんの方から振っちゃいなよ。周りにいくらでも奈緒ちゃんのことを好きな人が
いるんだし』って言ってたよ」
「おまえそんなにもてるの?」
奈緒がいたずらっぽく笑った。
「なあに? 気になるのお兄ちゃん。妹のことなのに」
「そういうわけじゃないけど」
「冗談だよ。気にしてくれて嬉しいよお兄ちゃん。でもあたしを好きな人がいるなんて話
は聞いたことないよ」
「そうなんだ」
「安心してお兄ちゃん。鈴木奈緒の目には今のところお兄ちゃん以外の男の子は全く映っ
ていないから」
「それはそれでまずい気がする」
「何よ。嬉しいくせに」
「あのなあ・・・・・」
「シスコン」
「今日は冗談ばっかだな。この間までおまえは真面目な女の子だと思ってたよ」
「彼氏に見せる顔とお兄ちゃんに見せる顔は違うんだよ。女の子ならみんなそうだと思う
よ」
実はこのとき相当勇気を出して奈緒のことをおまえと呼んでみたのだけど、奈緒は普通
に聞き流した。やはりこいつは血の繋がった妹なんだ。僕が奈緒の彼氏の状態で奈緒のこ
とをおまえなんて呼んだら、喜ぶにせよ嫌がるにせよこいつは絶対にそのことに気がつい
たはずだ。
「お兄ちゃん」
「うん」
「明日からはまたいつもの時間に電車で待ち合わせするからね」
僕がそれに答えようとしたとき携帯が振動して着信を告げた。
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