411:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/10/29(月) 23:42:13.48 ID:sMDby2FSo
「ごめんね」
「ううん、今は妹さんのことを考えてあげないとね」
奈緒には申し訳ないけど、この状況では明日香のことを優先する以外には選択肢はなか
った。
「朝来られるようになったらいつもの電車に来てね。あたしは毎朝あの電車に乗っている
から」
「行けそうになったらメールか電話するよ」
「うん。お兄ちゃんありがとう」
そのとき電話の背後で何かを注意するような女性の声が聞こえた。何を話しているかま
ではよく聞こえなかったけど、少しイライラしているような感じの声だった。
「いけない。ママが怒ってる」
奈緒が少し慌てたように言った。「ピアノの練習時間だったんだけど弾いていないの気
がつかれちゃった」
「練習を邪魔しちゃってたのか。悪い」
「いいの。お兄ちゃんと話しているほうが楽しいし」
「じゃあもう切るね」
「ごめんねお兄ちゃん。一応ここ防音になっているんだけど、完全じゃないからピアノを
弾いていないとママにばれちゃうの」
「そうなんだ。じゃあまた連絡するから」
「うん、待ってる。おやすみ、お兄ちゃん」
電話を切った後、僕はしばらくさっき考えていたことを再び思い返してみた。奈緒は僕
の妹だ。この先もずっと。そして明日香は僕に告白した。奈緒と恋人同士だった頃の僕な
ら、どうしたら明日香を傷つけずに断ればいいか考えるだけだっただろう。奈緒を振って
明日香と付き合い出すなんて考えたことすらなかった。
でも今ではどうなのだろう。僕にはもう彼女はいない。僕は明日香の気持ちに応えるべ
きなんだろうか。奈緒とは違って明日香は義理の妹だ。一滴たりとも同じ血は流れていな
い。だからさっき明日香が言っていたように付き合うことにも結婚することさえにも法的
な制約はないのだ。
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