448:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/02(金) 22:58:40.62 ID:2dnAe72Fo
男の子は明日香たちに追いついて二人の無謀な冒険を止めさせた。
「あたしたちはころばないもん」
妹の方が口をとがらせて男の子に反抗した。
「でも転びそうになってたじゃん」
「なってない。お兄ちゃんのうそつき」
やはりこの二人は兄妹なのだ。
「なってたよ」
男の子のほうも譲る気はないようで頑固に妹に向かってそう言い張った。
「なってない! ねえアスカちゃん」
「そうだよねー。ナオちゃん」
いつの間にかお互いの名前を教えあっていたらしい。ナオという名前を聞いたとき、あ
たしは公園に隣接した古い建物に集合して話し合いをしている人たちのことを思い出した。
今日あたしは結城さんと一緒に話し合いに参加している姉さんの代わりに明日香の面倒
を見ていた。どうせなら実家で明日香の面倒をみていた方が楽なのだけど、最近やたらに
明日香のことを構うようになった姉さんが自宅を出ようとしただけで、明日香の機嫌が悪
くなったのだ。それであたしは明日香と一緒にこんな場所に来ていた。
今日は確か結城さんも子どもたちを連れて来ていたはずだった。結城さんの両親が通院
する日だとかで子どもたちの面倒を見る人がいないという話だった。
結城さんと姉さんは家裁のロビーで待ち合わせをしていたから、あたしは家裁の建物に
入らずに明日香を連れて公園に来たのだった。
目の前にいる二人はやはり結城さんの子どもなのだろう。名前も奈緒人と奈緒で事前に
聞いていた話と一致する。
あたしは三人がもつれ合うようにして会話をしている芝生の方に向かった。
「こんにちは奈緒人君、奈緒ちゃん」
このときの奈緒人は少し警戒したようにあたしを見たのだった。そして奈緒ちゃんの手
を握って自分の背後に隠すようにした。その警戒心にあふれた彼の仕草は、この兄妹がこ
れまでどんなに過酷な生活を強いられてきたかを、そして兄妹の絆がどんなに強いのかを
物語るものだった。あたしは胸の痛みを誤魔化して無理に奈緒人に笑いかけた。
「心配しないでいいよ。お姉ちゃんは奈緒人君のパパの友だちだよ」
父親のことを聞いて奈緒人は少しほっとしたように警戒を解いてくれた。
「おばさんはパパのお友だちなの」
奈緒人は気を許してくれたようだった。
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