449:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/02(金) 22:59:29.74 ID:2dnAe72Fo
奈緒人の目を見たときあたしはもう間違いないと思った。奈緒ちゃんはともかく奈緒人
は結城さんにそっくりだった。
「でも奈緒人君と奈緒ちゃんの面倒は誰がみるの?」
今日明日香を連れて家裁まで来る途中であたしは姉さんに聞いた。
「安心して。いくらなんでも初対面の子どもたちの面倒を玲子にみれくれとはいわないか
ら」
本来なら相当緊張していてもいい場面なのに、姉さんは笑って言った。「玲子は明日香
を見ていてくれればいいよ。結城さんが言ってたけど奈緒人君って年齢のわりにはすごく
しっかりしてるんだって。奈緒ちゃんには奈緒人がいれば大丈夫だって結城さんは言って
たし」
確かに奈緒人がいれば奈緒ちゃんは大丈夫だろう。実際にこのふたりを見ていたあたし
もそう思った。年齢の割には奈緒人はすごく大人びている印象だった。きっと奈緒ちゃん
を守るためにそうならざるを得なかったのだろう。こんな子どもにそこまでの生活を強い
た人がすぐ隣の家裁に来ているのだ。そのとき初めてあたしは見たこともないこの二人の
母親に憎しみを覚えた。
「ねえ、お姉さん喉が渇いちゃったんだけどみんなでジュースを飲もうか。ソフトクリー
ムでもいいよ」
公園の隅にワゴンが出ていてジュースやらソフトクリームやらを販売していることにあ
たしは気がついていた。姉さんの彼氏の子どもたちなんだからあたしがまとめて面倒をみ
たって叱られはしないだろう。
「おばさんいいの?」
その頃の奈緒人は小学生の割には随分遠慮がちな子どもだった。いや遠慮がちなのはあ
れから十年たった今でも同じだ。
「あのさ、あたしのことは玲子お姉さんって呼んでね」
この年でおばさん呼ばわりされるのはかなわないので、あたしは奈緒人にそう言い聞か
せた。
「何でなの? あたしはいつも叔母さんって呼んでるじゃん」
無邪気な声で明日香が余計なことを言った。あんたの呼んでいる「叔母さん」とこの二
人がいう「おばさん」じゃ意味が違うのよ。あたしはそう言いたかったけどそれをこの無
邪気な子どもたちに上手に説明できる自信はなかった。
「玲子叔母さんっていうんだよ」
明日香が奈緒人に教えた。それでその時から今に至るまであたしは奈緒人に叔母さんと
言われ続けている。
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