450:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(神奈川県)[saga]
2012/11/02(金) 23:00:11.49 ID:2dnAe72Fo
公園の隅のワゴンであたしはソフトクリームを買って子どもたちに渡した。そろそろ正
午に近い時間で、あたしと明日香が公園に来てから一時間以上も経っている。
もう三人はすっかり打ち解けていた。奈緒人が結城さんに似ていたせいで、ともすれば
あたしの視線は彼に釘付けになっていたのだけど、よく見ると妹の奈緒ちゃんはすごく可
愛らしい子だった。身びいきではなく明日香も可愛い子だと思っていたのだけど、外見の
整っていることでは奈緒ちゃんの方に軍配が上がった。
明日香と仲良しになったらしい奈緒ちゃんだけど、彼女の視線はすぐに奈緒人の姿を求
めていた。途中、奈緒人はあたしに奈緒ちゃんを託して公園のトイレに行った。明日香と
夢中になってお喋りしながらソフトクリームを舐めていた奈緒ちゃんは、奈緒人がそばに
いないこと気がつくとパニックにおちいったのだ。
突然泣き出した奈緒ちゃんを抱きしめて宥めていたあたしは、奈緒人が帰ってくるのを
見つけてほっとした。奈緒ちゃんはあたしの手から抜け出して奈緒人に抱きついた。
離婚調停では結城さんの奥さんは二人の親権を主張していて折り合いがついていない。
でもまだ幼い奈緒人と奈緒ちゃんをここまで追い詰めた母親にそんなことを言う資格はあ
るのだろうか。結城さんの離婚に関しては全く口を出す気もその資格もないあたしですら
そう思った。この子たちは結城さんと姉さんに引き取られた方が絶対に幸せになれるだろ
う。いや、幸せになれなくても少なくとも普通の子どもと同じ生活は送れるに違いない。
姉さんが再婚後にも仕事を続けるのなら、そうしたらそのときはあたしがこの三人の面
倒をみてもいい。さっきまでサークルの北海道合宿に未練たっぷりだったあたしだけど、
このときは本気でそう思った。
このとき結城さんと姉さんがワゴンのそばにいるあたしたちに気がついて、連れ立って
あたしたちのところに来た。
「あら、結局一緒にいたんだ」
姉さんが微笑んだ。
「玲子さん、奈緒人たちの面倒までみてもらってすいませんでした」
結城さんもあたしにそう言った。
「パパ」
奈緒ちゃんが奈緒人から離れて結城さんに抱きついた。
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