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823:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/09(水) 23:16:27.95 ID:wSH5UfB0o

 最初のうちは、体調不良で二人とも休ませますという連絡が麻季から幼稚園にあったら
しい。でもそのうちその連絡すら無くなり不審に思った幼稚園の先生が自宅や麻季の携帯
に連絡しても応答がない。そんなことが数日間に及ぶようになるとさすがに心配になった
幼稚園から児童相談所に連絡が行った。同時にマンションの近所の人たちからも隣家は昼
間の間は子どもが二人きりで過ごしているらしいという通報も児童相談所にあったそうだ。

 児童相談所の職員が家庭訪問をして見つけたのは、自宅の食べ物を漁りつくして衰弱し
た子どもたちだった。風呂やシャワーも入っていなかったようで異臭がしたそうだ。結局
奈緒人と奈緒はその場で救急車で病院に運ばれて点滴を受けた。そしてその二日後に児童
相談所に一時保護された。

 警察を経由して僕の職場を突き止めた相談所の職員は、麻季には連絡を取らずに編集部
に電話した。編集部から僕の携帯の番号を知った相談所のケースワーカーが僕に連絡した。

「結城さんの依頼どおり実家のご両親と妹さんが二人をお迎えにきたので身分を確認した
上で奈緒人君と奈緒ちゃんをお渡ししました。翌日に奥様が見えられましたけどね」
 僕が帰国して児童相談所の担当だというケースワーカーをたずねたとき、彼女は苦笑し
ながら僕にそう説明した。「奥様は男の人と一緒に来て、大きな声で私たちを誘拐犯呼ば
わりしてましたよ」

 僕は妻の不始末を謝罪した。

 結局わかったのはこれだけだ。麻季が子どもたちを放置したことは間違いない。最初そ
の話を聞いたとき、僕は麻季の身に何か不慮の事故が起きたのではないかと思った。玲菜
の寂しく悲しい事故のことが頭をよぎった。でも、相談所の職員や妹の話によるとそんな
ことは全くないらしい。ようやく自分でも理解できてきた事実。それは想像もできないけ
ど麻季が子どもたちを意図的に放置した挙句、子どもたちを保護した相談所や僕の実家に
押しかけ子どもたちを渡すように居丈高に要求したということだった。

 いったい麻季の心境に何が起こったのか。こんなのは僕の知っている麻季の行動ではな
い。自分の不倫や僕の玲菜への想い、それに僕の不在で混乱したとしても、少なくとも麻
季が愛している子どもたちを放置するようなことは考えられない。僕は妻が知らない女性
のように思えてきた。そしてそのことに狼狽した。

「父さんたちは?」

 僕は気分を変えようと妹に聞いた。

「子どもたちの服とか必要な品物を買いに行ってるよ。お兄ちゃんの家からは何も持って
来れなかったからね」

「おまえにも迷惑かけたね」

 僕は妹に謝った。

「気にしなくていいよ。大学はもう講義はないし四月に入社するまでは暇だしね。それに
奈緒人君と奈緒ちゃんも懐いてくれたし」

「悪い」

「だからいいって。あ、父さんの車の音だ。帰ってきたみたいね」


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