824:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/09(水) 23:17:59.56 ID:wSH5UfB0o
「おう、博人帰ったのか」
父さんと母さんは大きな買物袋を抱えて部屋に入ってきた。
「おかえり。奈緒ちゃんのサイズの服はあった?」
妹が心配そうに母さんに話しかけた。
「うん、探し回ったけど見つけたよ。奈緒人の物も一通り揃ったよ」
「よかった」
僕の子どもたちのために両親と妹がいろいろ考えてくれている。それは有り難いことな
のだけど、そのことは今の僕にはすごく非日常的な会話に聞こえた。これまで僕は子ども
たちの服のサイズなんか気にしたことはなかった。それは全て麻季の役目だったから。本
当にもう戻れないのかもしれないという事実をようやく自分に認め出したのはこのときか
らだった。
「父さん、母さんごめん。二人ともこんなこと頼める状態じゃないのに本当に悪い」
両親は高齢だった。僕と妹は両親が三十歳過ぎに生まれたのだ。両親が居宅支援サービ
スを受けようといろいろ調べていることは、以前僕は妹から聞いていた。
「おまえのためじゃないよ。孫のためだからね」
母さんが笑って言った。
「それより博人、麻季さんと何かあったのか」
父さんが真面目な顔になって言った。
「見当もつかないんだ。一月前に帰宅したときだって普通にしてたし」
「お兄ちゃんも何が何だかわからないんだって」
妹が助け舟を出してくれた。
「そうか」
父さんはため息をついた。「おまえ、いつまで日本にいられるんだ」
「明後日にはまた戻らないと」
「わかった。とりあえず一月後には帰宅できるんだな」
「うん」
「じゃあ、それまでは奈緒人と奈緒はうちで預かる。何があっても麻季さんには渡さな
い。その代わりに帰国したら一度麻季さんとちゃんと話し合え」
「・・・・・・明日、麻季の実家に行ってみようかと思うんだけど」
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