913:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/03(日) 00:05:27.52 ID:gNbKbyMjo
二人の女の子にお兄ちゃんと呼ばれていた奈緒人はあまり動じていなかった。自然に明
日香ちゃんのことを受け入れているように見えたけど、それでも奈緒人が一番気にしてい
たのは奈緒のことなんだろうなと奈緒人の様子を眺めながら僕は思った。それより僕にと
って意外だったのは、奈緒人が実家の両親や唯に慣れ親しむのと同じくらい玲子ちゃんに
気を許していたことだった。普段は大人同士の会話が始まると、大好きなはずの唯にさえ
遠慮していた奈緒人が、僕や理恵の話しかけている玲子ちゃんの気を引こうと試みている
ことに僕は気がついた。ただ、奈緒人は玲子ちゃんのことを「玲子おばさん」と呼びかけ
ていせいで、玲子ちゃんの機嫌を少し損ねているようだったけど。
「あのね奈緒人君。おばさんじゃなくて玲子お姉ちゃんって呼んでいいのよ」
「なんでよ。あたしは叔母さんって呼んでるじゃん。お兄ちゃんも叔母さんって呼べばい
いよ」
明日香ちゃんが奈緒人の腕に手をかけた。一瞬、奈緒が明日香ちゃんの方を見た。その
視線はまるで子どもっぽくなかった。嫉妬する一人の女の子のような視線みたいだ。
・・・・・・まさかね。考えすぎだと僕は思った。麻季の心境を想像しようと努めていたせい
か自分まで変な影響を受けたらしい。僕は頭を振った。
「どうしたの」
気が付くと理恵が不審そうに僕の方を眺めていた。
「いや・・・・・・何でもない」
「三人ともすぐに仲良しになったね。何だかうれしいと言うか気が抜けちゃった」
「どうして?」
「うん。あたしと博人君がうまくいってもさ。子どもたちが一緒に住むことに慣れなかっ
たらどうしようかってちょっと心配だったからさ。でも玲子の言うとおりいらない心配だ
ったみたい」
奈緒人と奈緒の様子に僕と玲菜の心の中の不倫を重ねて見ているのではないかと最初に
言い出したのは理恵だった。でも理恵はそんな麻季の心の動きが異常なものだと見做して
いたのだろう。理恵自身は明日香ちゃんのことはもちろん、奈緒人の奈緒が仲がいいこと
に対して単純に喜んでいるだけで,それ以上余計なことは何も考えていないようだった。
もうこのことを考えるのはやめようと僕は思った。麻季が何を考えているのなんかどう
でもいい。それよりも親権を獲得できれば、僕と理恵の家庭の幸せは約束されたようなも
のだ。子どもたちの仲のいい様子を見てそれがわかっただけで十分なのだ。
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