917:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/03(日) 00:12:06.99 ID:gNbKbyMjo
こんな時にどうかと思ったけど、立ち話を避けるためには選択肢はあまり残されていな
かった。
「そこの居酒屋でもいいかな」
麻季は黙って頷いた。
チェーンの居酒屋はそこそこ混んでいるようだったけど、僕たちは待たされることなく
席に案内された。
向かい合って席に納まるとしばらく沈黙が続いた。
店員が突き出しをテーブルに置いて飲み物の注文を取りに来た。
「・・・・・・僕には生ビールをください。君は・・・・・・ビールでいい?」
麻季は俯いたままだ。これでは店員だって変に思うだろう。
麻季は昔から炭酸飲料が苦手だった。彼女は酒が飲めないわけではなかったのだけど、
ビールとか炭酸が入っているものは一切受け付けなかったことに僕は思い出した。彼女は
地酒の冷酒とかを少しだけ口にするのが好きだったな。それでもこの場で僕が麻季に酒を
勧めていいのだろうか。少し僕は迷った。
「・・・・・・冷酒、少しだけ飲むか」
俯いていた麻季が少しだけ顔を上げた。
「・・・・・・いいの?」
「いいのって。聞く相手が違うだろ」
こいつはいったい何を考えているのだろうか。
「冷酒でいいか」
「うん。あたしの好みを覚えていてくれたんだ」
麻季の返事は少しだけ嬉しそうに聞こえた。
やがて生ビールのジョッキと冷酒の瓶がテーブルに運ばれてきた。麻季の前にはガラス
のお猪口のような小さなグラスが置かれる。何となく手酌にさせるのも可哀そうで、僕は
冷酒の瓶を取って彼女のグラスに注いだ。
「ありがとう」
麻季がグラスを手に持って僕の酌を受けて微笑んだ。何か混乱する。まるで奈緒人が寝
たあと、夫婦で寝酒を楽しんでいた昔の頃に戻ったような感覚が僕を包んだ。
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