918:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/02/03(日) 00:13:09.71 ID:gNbKbyMjo
今日一日ほとんど飲み食いせずに仕事をしていたせいか、こんな状況でも喉を通過する
生ビールは美味しかった。人間の整理は単純にできている。僕は思わず喉を鳴らして幸せ
そうなため息をついてしまったみたいだ。麻季は冷酒のグラス越しにそんな僕の様子を見
てまた微笑んだ。
「博人君、喉渇いてたの?」
「・・・・・別に」
「何か懐かしい。博人君が残業して深夜に家に帰って来たときって、いつもビールを飲ん
でそういう表情してたね」
「そうだったかな。もう昔のことはあまり覚えていないんだ」
僕は意識して冷たい声を出した。
・・・・・・実際は覚えていないどころではなかった。子どもができる前もできた後もあの頃
の僕の最大の楽しみは、帰宅して次の日の仕事を気にしながらも麻季にお酌してもらいな
がらビールを飲むことだったから。奈緒人を出産してからは麻季は酒を一切飲まなくなっ
たけど、その前は彼女も僕に付き合って冷酒をほんの少しだけだけど一緒に付き合ってく
れたものだった。
いや。そんなことを思い出してどうする。どういうわけか、あれだけひどいことを麻季
にされたにも関わらず僕は以前の生活を懐かしく思い出してしまったようだ。僕は無理に
冷静になろうとした。
「それで何か用だった? 調停のことだったら家裁の場以外では交渉しないように弁護士
に言われてるんだけど」
「・・・・・・うん」
「うんじゃなくてさ」
麻季が何を考えているのか僕には全く理解できない。
「食事してないんでしょ」
「え」
「博人君、職場で夜食食べるの嫌いだもんね」
麻季がどういうわけかそう言った。「何か食べないと」
麻季はいそいそとメニューを持ってじっとそれを眺め出した。
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