過去ログ - 姪「お兄ちゃんのこと、好きだよ?」男「……そう?
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[sage saga]
2012/09/11(火) 11:53:04.43 ID:Id582b34o
彼は展示場の二階の窓からこちらを見下ろしていた。僕は強い動悸に襲われた。
気味の悪い感触がふたたび鎌首をもたげる。
その顔には見覚えがあった。
見覚えというより、その姿はどのような言い訳のしようもなく、僕そのものだった。
もちろん僕は鏡や映像以外で自分を客観視したことはない。けれどその顔はたしかに僕に似ていた。というより、同じだった。
背丈も、服装も、顔のパーツのひとつひとつも、僕に似ていた。彼はこちらを見下ろしていた。中庭を、ではなく、僕を見下ろしていた。
目が合って少しすると、彼は口角を鋭く曲げ、ゆがんだ笑みを浮かべた。
その顔は、やはり僕に似ている。
僕は無性に不安な気持ちになった。催事場の光景やそこにいる人々の存在が、蜃気楼のように不確かに感じられる。
やがて彼は、窓辺から身を剥がした。去り際、こちらに向けてもう一度微笑する。
胸がざわざわと落ち着かない。足が縫い付けられたように、身動きが取れなかった。
異様な息苦しさを感じた。暑さにやられたのかもしれない。僕は重い体を動かして木陰を目指す。
水を飲みたかったが、浄水器についての講釈を長々と受けるのはごめんだった。
いや、見るからに物見遊山の学生に向けて、宣伝などはしないだろうが……そんな扱いは嫌だった。
木にもたれかかると、じんわりとした熱が体中に広がっていく気がした。
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