過去ログ - 姪「お兄ちゃんのこと、好きだよ?」男「……そう?
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603:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/24(土) 14:52:38.05 ID:sIBdVn+so

「それと、弦はゆるめないと切りにくいし、跳ねるよ」

 わたしはニッパーを構えて力いっぱい弦を切ろうとする。でも力を籠めてもなかなかきれなかった。
 お兄ちゃんがしているのを、子供の頃何度か見たことがある。わたしは年をとったけれど、できないことがたくさんある。
 だからお兄ちゃんなしじゃ生きていけなかった。お兄ちゃんがいなくちゃ不安で、生きていける気がしなかった。

 それなのにお兄ちゃんはわたしを置いていったのだ。
 恨んでいるし、怒っているし、悲しいし寂しい。でもそれは仕方ないことだと心のどこかで分かってはいた。

 でも、じゃあ、どうすればよかったんだろう? 

「なあ、手伝うよ」

 とケイくんは言った。

「だから死なないでくれよ」

 わたしは本当に涙を流しかけた。でもそれはもう手遅れなのだ。 
 わたしはとっくに手遅れの住人なのだ。ケイくんの声は彼らしくもなく震えている。
 それがいっそう悲しい。あの日彼がわたしの傍にいてくれれば、わたしは死ななかったかもしれない。
 そう声を掛けてくれたなら。でも、それを聞き逃したのは他でもないわたし自身なのだ。
 誰の声も耳にしたくなかったのはわたし自身なのだ。
 
 すべての原因はわたしにある。いつだって。誰のせいにもできない。




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