過去ログ - 姪「お兄ちゃんのこと、好きだよ?」男「……そう?
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794:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/01(火) 15:26:44.57 ID:7p1BbX+Yo



 
 着の身着のまま家を飛び出して、おぼろげな記憶を頼りに道を歩いた。
 夜中に子供ひとりで歩いていたせいか、何度か大人に声を掛けられたけれど、そのたびに返事もせずに逃げ出した。
 不審に思っただろうが、保護しようとか企む善人がいなかったことに、わたしは少しほっとした。
 
 時間も、日付も、記憶も、曖昧だった。もともとわたしはそうなのだ。
 母と父と三人での暮らしが始まってから、わたしの認識は空疎で希薄だった。

 どんな連続性も失われていた。

 だから祖母の家に辿りつけたのは奇跡のようなものだったのかもしれない。
 あるいは――“彼”と一緒に道を歩いた記憶があったからだろうか。
 
 わたしがインターホンを鳴らすと玄関に出てきたのは祖母だった。
 彼女はわたしを見て嬉しそうに顔をほころばせた後、母がいないことに気付いて不審そうな顔をした。

「お母さんは?」と訊ねられてわたしは俯く。それから少し考えて、首を横に振った。
 祖母は不審がったが、とりあえずわたしを家に招いた。
 
 祖母の家は暗かった。蛍光灯の光すらが暗く冷たかった。
 そこではさまざまなものが深い場所に沈み込み、静かに停滞しているように見えた。
 



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