42:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]
2012/11/18(日) 20:08:16.61 ID:RKgc1Uqb0
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外光を多分に取り入れる窓のそばで、男は羊皮紙に目を通していた。
緋の法衣に身を包み、四つ角を持つ角帽を冠(かぶ)っている。
胸元では首から垂れ下がった黄金の十字架が微かに揺らめいていて、彼が聖職者である事を示していた。
「カルヴァン猊下」
名を呼ばれ、男は顔を上げた。
皺が刻まれた彫りの深い顔は威厳に満ち溢れている。
「件の逆賊ですが、取り逃がしたようです」
カルヴァン枢機卿は男ーー彼の書記官ーーの報告に僅かばかり顔を曇らせた。
「……かの名高い傭兵大国の精鋭と言ってもその程度か。所詮、傭兵は傭兵だな」
「まったくですね。それと、もう一方の謀反人は確実な目撃情報すら届いておりません。彼等に接触は無かったようです」
「……まったく難儀な事だ。とにかく、引き続き捜索に当たらせろ」
「了解しました」
書記官は恭しく挨拶をして退室した。
カルヴァン枢機卿は再び羊皮紙に目を戻す。
懇意にしている豪商ルソーからの便りであった。
グラン国内で隆盛を極めている男で、強引な手腕から名前と同じほど悪評も広まっている。
便りの内容は取り留めの無いもので、カルヴァン枢機卿の機嫌を取るようなことを長々と書いてある。
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