5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします(チベット自治区)[saga]
2012/11/07(水) 00:02:39.03 ID:0rJjsqvo0
前方に一際大きな黒い塊が有った。全容が掴めない程に巨大な影だ。
おそらくは倒木が幾重にも重なったのだろう。
傲然と居座るような影は、城壁のように高かった。
一秒にも満たない思案の後、私は巨大な塊を跳び越える事を決めた。
私に宿る呪術の威力の一端を垣間見させることで、追跡する気力を喪失させることが目的だ。
それに、仮に追跡を続行するとしても相当の時間稼ぎになるはずだ。
全身に意識を巡らせる。
足の爪先から髪の毛一本一本の末端まで。
――月であり蛇。
私という存在の濃度が増していくのを感じる。
――千の穢れ無き女。
そしてこの身体は私のものでは無いのだと再認識する。
――血化粧。
全身に巻き付いた蛇のような紅の刺青が発光を始める。
――狂おしく愛した人。
久方振りに目にする真紅の光は、自分でも身震いしてしまいそうなまでに禍々しかった。
――紅い鬼。
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