58:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2012/11/25(日) 02:39:15.57 ID:TR/d6o+DO
男「確かに、悪魔は危険な相手かもしれない。
でも、こっちには本の精霊がいる。
大丈夫さ、名前を当てるだけなんだから」
女「……」
一度声に出すと、残りはすらすらと淀みなく言葉にすることが出来た。
その言葉は口にしている男自身にも妙に腑に落ちる説得力のある言葉で、まるで頭の代わりに口が心中の答えを紡いでいるようだった。
男「悪魔を野放しにすると、まだまだ犠牲者が出る。
もしかしたら自分ならそれを止められるかもしれないというのに、ここまで来て全部投げ出して無視して逃げ帰りたくはないよ。
それに……」
男は額の汗を袖で拭い去りながら、女に言った。
男「それに、女さんをそのままにしておきたくは無いんだ。
どこにも行けないまま地上を亡者のようにさまよい続けるなんて、友人をそんな目に遭わせたくは無い」
男は真っすぐに女の瞳を見つめ返す。
身体を襲う怖気も冷や汗も、今は完全に収まっている。
先ほどまで男を気圧していたものたちは、何処かへと消し飛んで行ったようだった。
男「だからさ……退いてくれないかな?」
女「……」
最後に男が告げると、女は何事か考えるように顔を伏せる。
やがて女は再び顔を上げると、水平に伸ばしていた両手を下ろし、そのまま一歩片足を下げて男に道を譲るように身体を斜めにした。
男「ありがとう」
言いながら男は女の前を通り過ぎ、少女の後を追う。
女「……」
その隣に並んで歩くようにして、女も無音で浮遊移動を始めたのだった。
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