過去ログ - 男「悪魔探し?」
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59:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga sage]
2012/11/26(月) 20:32:54.76 ID:v6IERwADO
…………………………

 気が付けば、時刻は夜の十時を過ぎていた。
 集団生活を営む上での常なのか、皆は消灯時刻に合わせた生活スタイルになっているようで、夜もまだ浅い時間帯だというのに人気は無く、通り過ぎていく病室の摺りガラス越しにちらほらと揺れる灯りからわずかに人の存在を窺えるだけだった。

……キィ……キィ……

 車椅子の軋む音が、しんと静まり返った廊下を進んでいく。
 夜間用のほのかな暖色灯が点々と灯る天井の下、男は緊張の面持ちで黙然と、少女と車椅子の女性に続いて進んでいた。
 男は女が道を塞いで注意喚起してきた事を少女に告げようかと迷ったが、少女が車椅子を押しながら女性と和気あいあいと話しているのを見て、開きかけた口を閉じた。
 少女も悪魔がいるかもしれないという事は十分に理解しているだろうし、これ以上心圧を重ねた所でどうにかなるものでも無いだろう。
 女性を巻き込む可能性はなきにしもあらずだが最悪、悪魔と対峙すると言ってもしょせんは名前を当てるだけ。状況が明らかに危険だと見たら女性を遠ざけるなり、自分が上手くカバーすればいい。
 男はそう理由をつけて自分を納得させた。
 しかし内心、少女の溌剌な様子に勇気付けられている自分がいて、またそれから離れたくないと思っている自分の一抹の不安にも男は気付いていた。

男「頑張らなくっちゃな……」

少女「……? 何か言いましたか?」

 気を入れるための独白を聞きつけた少女が振り返り、くりくりとした丸い瞳を男に向けてくる。
 男はかぶりを振って短く答えた。

男「いや、何も」

少女「……そうですか」

 続けて男が微笑を浮かべて返すと、少女はそれ以上突っ込んで聞いてくる事はせず、再び元通りに車椅子を押して歩き始める。
 男も気を取り直してその後に続き──
 女性の驚くような声が上がったのはその時だった。

女性「あっ!?」

少女「どうしました?」

女性「いました! 医者が!」

男「えっ!?」

 女性の言葉の意味を理解した男は急ぎ、女性の視線を追って首を廊下の向こうに振り動かす。
 果たして、そこには曲がり角へと消えていく白衣の端が一瞬だけ見て取れた。


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