28:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 07:17:32.30 ID:Nw7Sp6l80
「オレもガキだったが、カミやん、アンタはもっとガキだった。失ったものもあっただろう。
だけれど、その多くは回収できたはず。これまでは」
「これ、までは」
リフレインする。大概において、少年時代のなくしものは後で取り戻せたり、もともと必要のなかったものだったりする。
「だけどこれからはそうじゃない。オレたちはもう巣立たなきゃいけないんだ。失敗は、許されない。今度こそ」
「今までだって失敗は許されなかった。なあ、暗部に俺を招くのに、抵抗はなかったのか」
「人聞きの悪い。親友に向けて吐ける台詞じゃないな」
もちろんジョークだ。
「別に……、悪く言ったつもりはないよ。それに加担する理由もある」
「それはかつてのヒーローとしての台詞か? それとも、『こちら側』の人間としての台詞?」
「俺はヒーローなんかじゃない。前にも言わなかったか。手の届く範囲は俺の世界なんだ。
そこで立ちすくんでいるやつをひっぱりあげたいだけさ。ただの性分だ。それ以上でもそれ以下でもない。
俺の右手で壊せるものは、高確率でぶち壊す。お前が俺を引っ張ったのは、それが理由じゃないのか」
「少し違う」
なんだ、こいつまだつっかかってくるのかよ。
俺はため息をついてげんなりする。
「カミやんは親友だにゃー。よくある話だぜい、『友人の紹介』ってやつ」
「はぐらかすなよ。前から聞いておきたかったんだ」
「なあカミやん。大事なのは、ここにいる理由より、何かをする理由じゃないのか。不安定で、立ち位置が定まらないのはわかる。
でも、もう後戻りできないんだ。動き出してる。オレも、ヤツらも、多分、カミやんの心も」
わかっている。土御門は俺を暗部の仕事に誘うとき、しっかりと事前に説明をしていた。
それでもなお、俺は引き受けた。闇に足を踏み入れたのだ。
昔の俺ならどうしただろうとふと考える。
もっと大雑把に動いたかもしれない。10年の歳月は、俺をどう変えたのか、まだわからなかった。
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