過去ログ - 【オリジナル】神がかってる。
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/27(火) 21:24:43.80 ID:NZLxTVaw0
人間にはカバーがかかっているようだなんてことを、いつもつるんでいる連中に言おうものなら、また
何を言いだしたんだこいつは、とか言うに決まっている。

それで遼介がまたよくわからないことを言い出したぞ、なんて笑うんだろう。
だから言わずに、思うだけにする。

たとえ笑われても、それでも俺は思う。
何かで隠されていると。
根拠なんてない。
感じるだけだ。

例えば俺が高校にいつも通り登校する。
クラスにいる人間のほとんどが、何を考えているかわからない………と、そんなの当たり前のことだと言われるかもしれない。
しかし、毎日一緒のクラスで顔を合わせて………いや、あまり話さない奴もいるけど、すぐ近くにいる人間のことを、知ることが
できないというのが無性に気に入らない。

毎日、毎日。
言いようのない苛立ちを感じるのは、悪いことだろうか。
世界が、隠し事をしている。
俺に何かを隠しているし、隠し続けている………ような気がする。

ああ、苛立つのは隠されているんじゃなくて、騙されているのではないかと思うからだろうか。

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2:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/27(火) 21:31:06.54 ID:NZLxTVaw0
がたん、がたんという一定のリズムに揺られていると、自分でも何故こんなことを考えているんだというようなことに
時間を使ってしまう。
詩人か、俺は。
平和な国、日本の片田舎の地方鉄道で年代物の座席に寄りかかっていると、少し眠くなる。

以下略



3:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/27(火) 21:44:45.44 ID:NZLxTVaw0
窓の外に見える………いや、流れる駅、電柱、水田、小屋、住宅。
眩しい夕日。
車内には垂れ下がる広告。
毎日掃除はしているのだろうが、決して綺麗とは言えない年季のある座席。

以下略



4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/27(火) 22:07:33.91 ID:NZLxTVaw0
表紙には青い背景………だが、赤や黄緑が混ざっている、三原色を駆使した眩しい色合いだった。
淡い色使いではない。
日本的ではなく外人が好みそうな派手さ。
俺が抱いた感情は、感心ではなく心配だった。
ああいう目立つのは………うまく言えないが俺の経験上、ろくな事がない。
以下略



5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/27(火) 22:14:43.00 ID:NZLxTVaw0
流行であると言うだけなら、これ以上は見ても仕方がないか、と自分の学生カバンの中から暇つぶしになるものでも探そうかと思った。
しかし彼女が読んでいる本の表紙にタイトルや作者名などが含まれていないことに気がつくと、手を止めた。

彼女の読んでいる本には、表紙にタイトルが書いてない。
作者名すらも。
以下略



6:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/27(火) 22:21:45.80 ID:NZLxTVaw0
俺はその女子を観察する。
やや鋭い目元の黒い曲線が美しく、賢そうに見える。
本に目を落としているので、もっとしっかり顔が見えるようにと、少し身をかがめている俺は嫌な人間である。

まあ、バレなきゃいいんだよ、バレなきゃ。
以下略



7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/27(火) 22:29:01.34 ID:NZLxTVaw0
―――そうじゃないだろ俺。
本を見てたんじゃねえのかよ。
本を見てたはずだ。
というわけで、彼女の手元に視線を戻す。
やはり強烈な違和感を放ち続けるその本はどうやら、紙製ではない。
以下略



8:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/11/27(火) 23:00:12.97 ID:NZLxTVaw0
文庫本カバーというものがある。
言い方とか呼び方にはいろいろあるんだろうけど、つまり本屋で小説を買った時に、店員さんが表紙にかけてくれるものなんだが、そのほとんどは、店名が一定の間隔で入っているくらいのシンプルな柄で、紙製のもの。
ブックカバー。

世の中は広いもので、高級な本革製のカバーを使っている読書家もいると、いつか見たテレビ番組で言っていた覚えがある。
以下略



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