過去ログ - エルフ「……そ〜っ」 男「こらっ!」
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610:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 17:55:15.00 ID:RLjbm7yt0
男「えっ!? え? 結局行かないの……?」

戸惑いの声を上げる男を部屋の外に出し終え、妹は強い口調で告げる。

妹「着替えるの! しばらくそこで待っててよ!」
以下略



611:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 17:56:06.30 ID:RLjbm7yt0
しばらくして着替え終わった妹が出てきたが、未だ不機嫌なのには変わりなかった。それを見て男は妹に見られないようにこっそりとため息を吐いた。
子供らしい意地の張り合い。どちらとも折れるわけではなく、母に出かけると伝え、二人とも外に出た。
妹の言っていたことが本当なのか確かめるために二人は森へ向けて歩き出す。しかし、横に並ぶのではなく妹は男の一歩後ろを歩く。
意地を張っていてもやっぱり妹のことが気になるのか、男はチラチラと何度も後ろを盗み見てはきちんと妹が付いてきているか確認していた。
必然、前を向く妹と視線が交わる。突然の事に互いに身体が硬直する。しばらくの沈黙の後、男が折れる形で妹に話しかけた。
以下略



612:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 17:56:34.89 ID:RLjbm7yt0
言われてみれば確かに妹は夜に出歩くのを苦手としていた。だが、まさか拗ねている理由がそんな事だとは思わなかったため、男は拍子抜けしてしまい、ほんの少し呆れてしまった。

男「ま、まさかそんな理由で拗ねてたの……?」

妹「い、いいじゃん! 私結構傷ついたんだから!」
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613:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 17:57:29.26 ID:RLjbm7yt0
しばらくは顔を背けて男の方を見ようとしなかった妹だったが、やがて少しずつ視線を移し、再び男の瞳と妹の瞳が交わり、

妹「一人でどこかに行けって言わない?」

男「言わない、言わない」
以下略



614:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 17:58:39.65 ID:RLjbm7yt0
妹のコロコロ変わる気持ちについて不思議に思いながら、機嫌が良くなったからどうでもいいかと男は思い、笑顔を浮かべていると、その横を数名のローブを被った者達が通り過ぎた。
不意に身体のそこから沸き上がる怖気。息をするのも忘れて、男は彼らを見つめた。ローブの隙間からは見る者を萎縮させる血走った目が見える。そして、その目が己を見つめている男の瞳を捕らえると、ほんの僅かに彼らの口元が釣り上がった気がした。

妹「お兄ちゃん、どうかした?」

以下略



615:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:00:25.09 ID:RLjbm7yt0
歩いて、歩いてようやく森へと辿り着いた二人。一般的に見てあまり広くないこの森も、小さな子供二人からしてみれば広大な魔窟。その魔窟にいるかもしれない、噂だけの存在のエルフ。それ探しに森の中へと二人は今まさに踏み入ろうとしていた。

妹「よ、よしっ! エルフを探すよ! 準備はいい? お兄ちゃん!」

家を出るまでの態度はどこへ行ったと言わんばかりに元気よく声を張り上げる妹。道中でつないだ手はそのままに、妹に引きずられるようにして男は森の中へと入って行った。
以下略



616:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:00:56.60 ID:RLjbm7yt0
男「どうもしないさ。ただ、エルフを探すのは少しだけにして早めに家に帰ろうか。ちょっと約束があったの思い出した」

咄嗟に口から出た嘘だったが、エルフの探索に付き合ってもらっている手前強く言う事ができない妹は、

妹「わかった……もうちょっとしたら帰ろっ」
以下略



617:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:01:35.13 ID:RLjbm7yt0
男「ねえ、もしエルフが森にいて会う事ができたらどうするつもりだったの?」

帰り道、話す事も特になくなり、無言のまましばらく歩いていた二人。隣でぼんやりと空を見上げながら歩く妹に男はそんな質問を投げかける。

妹「えっとね。もしエルフに会う事ができたら私は噂について聞いてみたかったの」
以下略



618:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:02:42.44 ID:RLjbm7yt0
男「妹は……すごいな〜。僕はそんな風に考えたことなかったよ」

妹「えへへ〜。そ、そうかな?」

男「うん。もしかしたら妹は将来すごい事をする大人になるかもしれないね」
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619:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:03:09.93 ID:RLjbm7yt0
男「えっ……」

村が視界の彼方にぼんやりと見えるようになった時、男と妹は異変に気がついた。村の方角の空に黒煙がいくつも昇っていたのだ。風に乗って二人の方へと運ばれる黒煙。
すす臭いそれに混じって二人の鼻に届くツンとした刺激臭。吐き気をもよおすその中には、血と肉が焦げる匂いがした。

以下略



620:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/05(水) 18:04:54.12 ID:RLjbm7yt0
声にならない言葉が零れる。それもそのはず、目の前に現れた受け入れがたい現実をどう言葉にしていいのか男には分からなかったのだ。
黒煙を上げていたのは村の家屋。そして、血と肉の焦げる匂いを漂わせていたのは男達の友人や……家族だった。

妹「…………」

以下略



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