過去ログ - エルフ「……そ〜っ」 男「こらっ!」
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957:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/31(月) 20:16:36.54 ID:EQvKQYAS0
女魔法使い「……先生?」

 瞳を閉じ、下を俯いていた彼の元に女魔法使いが近づく。

男「女魔法使い……。どうかしたの?」

女魔法使い「いえ、実は少し先生に相談に乗ってもらいたい事があって……。今、大丈夫ですか?」

男「ああ、構わないよ」

女魔法使い「先生、この戦争ももうすぐ終わるんですよね」

男「たぶん……ね。状況は人間側に有利になっている。エルフたちがこれ以上抵抗の意思を示さなければあと数日もせずに終わると思う」

 彼の言うとおり、既に西と南ではエルフたちの降伏が宣言されていた。残るは今現在彼らのいる北と東の戦いのみ。

女魔法使い「でも、戦いが終わってもエルフたちは滅ぶわけじゃないんですよね」

男「それは、そうだろうね」

 そう、戦いが終わったとしてもエルフたちは全員殺されるわけではない。戦闘を指揮した地位のあるものは見せしめに殺されるかもしれないが、そうでないものたちは捉えられ、奴隷として人々の労働力になるだろう。
 なにせ、戦争のせいで土地は荒れ、作物もロクに取れていないのだ。働き手は大いに越したことはない。

女魔法使い「その中にはきっと、逃げ延びて生き残るエルフも残るんですよね。そいつらが、隠れて力ない人たちを襲う可能性だってありますよね」

男「可能性がないとは言えないな。でも、どうしてそんなことを聞くんだ?」

女魔法使い「実は、私この戦いが終わっても軍にのころうと思っているんです。それで、先生に出会う前の私みたいな子や苦しんでいる人たちの力になろうと思っているんです!」

 その言葉を聞いて、男は心底驚いた。目の前にいる少女はこの戦争の後の事まで考えているのだ。だが、軍に残るということがどれだけ危険が伴うか知っており、この道に仕方なくとはいえ彼女を引き込んだものとして男は確認しておかなければならなかった。

男「それがどれだけ危ないことかっていうのは、もう何度も戦場で戦ってきた女魔法使いならわかっているんだよね?」

 男の問いかけに女魔法使いは真正面から彼の瞳を見返して頷いた。

女魔法使い「はい、わかっていて言ってるんです」

男「……そっか。なら僕が口を挟むことは何もないや。頑張れ、女魔法使い」

 彼女を抱き寄せ、少し伸びた髪の毛に手を通し、そっと少女の頭を撫でる男。くすぐったそうにしながらも、嬉しそうにそれを受け入れる女魔法使い。
 女魔法使いとしては、自分のそばにこれからも傍に男が一緒にいて、これまでどおり自分に色々なことを教えながら行動を共にしてくれると考えての発言だった。
 だが、彼女の意見を聞いていた男の認識は違っていた。精神的疲労もあったのだろうが、彼女に意図するところに気がつけなかったのだ。
 そして、初めて出逢った時からの少女の成長ぶりを目にし、もう自分の力がなくても彼女は大丈夫ではないかと男は考える。軍に残るというのであれば、同じく軍に残るであろう女騎士や騎士がきっと手助けになってくれるはず。
 自分がもういなくても、この少女は大丈夫なのだ。
 そう思うと同時に、それまで胸の奥に引っかかっていた重しが一つ取れ、彼の脳裏にある選択肢が浮かんだ。
 今は戦争。自分は軍人。ならば戦うために力を使わなければならない。だが、戦争が終わり、軍人でなくなれば力を使わなくても済む。
 そんな考えが彼の中に生まれた。

女魔法使い「先生、どうかしました?」

 ボーッとしていた男を心配そうに見つめる女魔法使い。そんな彼女になんでもないと男は答えた。
 先ほどの考えはいつの間にか消えていた。だが、男が己の今後に答えを出すのはこれからすぐのことになる。彼にとって最後の戦い、そこで全てが終わりを告げる。



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