7:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage]
2012/12/14(金) 11:30:20.13 ID:lyqAXWj30
「……」
「……」
「ぷっ……くすくす」
「笑うなよ!」
ただ普通に響と並んで歩くだけでは、いぬ美の大きすぎる体なんて隠せるわけもない。
そうなるといぬ美を隠すために体全体を使わなくちゃいけないわけで。
「765プロの歩き方……カニみたいで、アハハハハ!」
手足を大きく開いて横に歩く俺を見て、爆笑する響。
道路沿いのカーブミラーを覗いてみると、いかに自分が間抜けな格好をしているかわかる。
くそぅ……なんなんだよ、もう。
「いやー、でも、ちょっと変な感じだぞ。もうIUも本選だっていうのにライバル事務所のプロデューサーと犬をつれて歩いているなんてさ」
「ああ、全くだな」
「いぬ美を移動させる時には便利だね、プロデューサーがいると」
「一応いっておくが、こういうのはプロデューサーの仕事じゃないからな」
小間使いか何かと勘違いしてるんじゃないか?
まあ、果汁100%のオレンジジュース買ってこいとか言って、そういう扱いをしてくるアイドル候補生が身近にいるが。
「じゃあ、どういうのがプロデューサーの仕事なんだ?」
「そう…だな」
カニ歩きをしながら自分のやっている仕事を思い返してみる。
春香の売り込みの企画をすることもあるし、仕事におけるタイムキーパーもするし、レッスンの指導だってやっている。
プロデューサー、マネージャー、トレーナーと三職一体になっているのは、高木社長の「アイドルと共に歩んでいく」という考えが強く表れているからなのだろう。
「とりあえず仕事は色々とあるが……アイドルに的確なアドバイスをすることが一番の仕事かな」
「ふーん、それなら自分にも的確なアドバイスしてみてほしいぞ」
「それなら、一つだけ言わせくれ。響、黒井社長から離れろ」
響の顔があからさまに嫌なものになる。それもそうか、会うたびにしつこく言っているからな。
「またその話か。何度も言ってるだろ、自分は961プロのやり方でトップになるだって!」
「その961プロのやり方が響に合わないと思ったから、こうしてアドバイスをしているんだ」
以前の俺はプロデューサーとしての自信がなくて言葉にできなかったが、今ならハッキリと響に伝えられる。
「今の響は、黒井社長に利用されているだけだ」
以前、テレビ局の方に新作のPVを渡しにいった時に黒井社長と話したことがあったが、
あの人は自分の名誉のことしか考えていない。
自分の事務所のアイドルに金をかけているなどと言う人だ。
おそらく、かけた金に見合う働きが出なくなったら簡単に捨ててしまうに違いない。
「響にも思うところがあるんじゃないのか?」
「くぅ……」
「今の俺なら少しは響の力になれる。思い切って黒井社長のやり方から離れてみないか?」
「でも、黒井社長の元を離れたとして、その後どうすればいいかわからないよ」
「その時は、響のプロデューサーについて一緒に頑張ればいいと思う」
「一緒に……でも自分、今までほとんど一人でやってきたからなあ。プロデューサーなんてついたら息が詰まるんじゃないかな?」
「なるほど、そういう考え方もあるか」
一人で何かするっていうのは、自分のやり方に文句を言う人がいないということだ。
そんな状況でやってきた響に、プロデューサーがついてあれこれ言ってくる。
響からしてみれば、自分のやり方にケチをつけられたようなもので気分が悪いものになるかもしれない。
それでも、やっぱり何かを言ってくれる、指摘してくれる人間は必要だと思う。
俺は春香との活動の中で、確かにそれを実感していた。
仕事の都合で、春香一人のセルフレッスンをさせた時はやっぱり俺とレッスンした時ほどの効果が得られなかった。
そして、何よりアイドルの支えとしてプロデューサーの存在は不可欠だ。
「よしっ!」
響にプロデューサーがいるってどういうことか。一人じゃないってどういうことか。
俺がそれを響に教えてやるには一つしかない。
「俺に響のプロデューサーをやらせてくれないか?」
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