10: ◆uCwA0MUuYI[sage]
2012/12/11(火) 14:17:28.76 ID:gRXqkQQAO
冷凍食品の無事を気遣いつつバスを待っていると、不意に肩を叩かれた。
体が少し跳て、後ろを振り向くと
彼女がいた。
否、一人の女性が居て、それが彼女だったのだ。
黒とショッキングピンクと水色の、アシンメトリーな格好だった。
化粧も派手であった。
その方面に疎く、特にめかしたりもしない私にはなんとも奇抜に見えた。
しかし、その特異さの中にもどことない優しさが見えた気がしたのもまた事実だ。
これが彼女の魅力だろうか。
私は彼女にこそ悟られはしなかったろうが、内心かなり動揺していた。
それこそ、先ほどまで彼女が抱いたに違いない悪印象について憂いていたのだから。
「またお会いしましたねっ」
屈託のない無邪気な笑顔だった。
彼女は文字通りきらきらと輝いていた。
「いつも日曜はお買い物なされてるんですか?」
「今日は遠出してみようと思いまして…」
「へぇーっ!そうなんだ!」
「貴女は…えぇーっと」
「私?あぁ、自己紹介がまだでしたね。私、呉キリカって言います!あなたは?」
「苺花(まいか)ユキ……です」
「イチゴの花に雪とかなにそれ、おいしそっ」
「あはは…呉さんは明るいですね」
「キリカって呼んでおくれよユキ!こっから敬語も抜き!」
「き、キリカ…」
「なぁんでそこで顔赤くするのさっ!」
なんだかとても親しげに接してくるキリカに、私の心配は杞憂と昇華してしまったようだ。
キリカは実によくしゃべる子だった。
滑舌もよく、立て板に水だった。
キリカはここから見高、県立見滝原まで通っているそうだ。
制服を見たことはあったが、その高校は近所ではなかった。
また、私とキリカは同じ番組を視聴していることもわかった。
そこからの話といったら、大いに盛り上がった。
楽しいひとときはあっという間に過ぎ、バスが来てしまった。
私は、大いなる充足感を得ていたのだった。
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