4:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/12/20(木) 05:12:13.26 ID:9KvLHikGo
宿は既に取ってある。新宿にある素泊まり5000クレジットの安宿だ。
それを10日分。
東京は物価が高く、他と比べるとどうしても宿泊費が高くなってしまうためあまり長居をしたくない場所ではあったが、仕方がないと割り切ることにする。
幾星霜の年月を生き、戸籍なんかとうの昔に消失している暁美ほむらは、正規の方法で活動資金を得ることはひどく難しい。
なけなしの資産、ほむらにとってお金はいつだって大事にしたいものだった。
簡素な、というよりも閑散とし、調節してもガンガンに冷風が吹き込んでくるというおんぼろエアコンが置かれた二重苦の部屋で、作業用の多機能携帯端末<Type:Abacus S-38990>を起動する。
黒光りする薄い板のようなそれは、単にスマホと呼ばれることが多く、海外では未だに"Cellphone"の通称で呼ばれている。
「電話」という機能が、ごったごたに詰め込まれた通信用ツールズの一つに過ぎなくなった現在に於いても、それは「携帯電話」という古の端末の延長線上に存在するものだという認識がなされているのだ。
普通のビジネスマンが用いるものよりも随分と値の張るその携帯端末を愛おしそうに指先で撫で、ほむらはワールド・ウェブへとダイブする。
目的地は、魔法少女相互扶助連盟・法の光協会が運営するサイトだ。
ごてごてとしたスクリプトを使用しておらず、簡素で見やすいつくりのページ。
現行リリースされている携帯端末の全ての機種で閲覧可能な、パケット代のかからないありがたい仕様だった。
先ず目に入るのは、Light of Low(法の光)の文字。
しばしば茶化されてlol(=笑)と言われる協会のサイトを、実際に笑うものは一人も居ない。
ここのデータベースに蓄積された情報群はあまりにも有益なもので、現在の魔法少女には不可欠な存在となっているからだ。
便利が過ぎると人は駄目になると言う。それはこの世界に延々と存在し続けているほむらにとって、自明の理として思えるものだった。
今の魔法少女は、魔法制御の精緻さ巧妙さにおいてはもはや臨界点とも呼べる域にまで達している。
反面、過去の魔法少女たちと比べると、個々の状況への判断力・応用力の低下が見られ、ある定められた規則性から外れた魔獣が出現した場合には、すぐさま危機へと陥るケースが後を絶たないでいる。
ほむらとしては、この情報は利用しつつも昔ながらの経験則に従っての戦闘となるため、その手の劣化は現状免れてはいる。
それでも、情報過多なこの世界で加減を知るというのはかなり難しい事で、少し気を抜けばすぐさま情報の海に溺れ能力の劣化が始まるだろうという事は、ほむらにしても自覚済みの事だった。
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