5:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[sage saga]
2012/12/20(木) 05:13:11.02 ID:9KvLHikGo
サイトに設けられた情報交換掲示板に存在する例のスレッドに目を通すと、予想通り一笑に付す書き込みが多数を占めていた。
高度に発達した翻訳機能によっておよそ書き込み内容の全ては不自然なく使用端末の当該言語に訳され、閲覧者は苦も無く内容を知ることができる。
それがなければ、記号としてしか認識できないような文字を持つどこかの国からの書き込みなど、暁美ほむらはその持つ意味を受け取る事が出来ないだろう。
Topic: 黙示録の獣<Apocalyptic Beast>が、東京に現れる
Name: Nameless
Text: 8/10の夜に、黙示録の獣が東京に現れる。現地在住の魔法少女は迎撃の構えを。
Re: そんな馬鹿なことがあるか。ここはガセネタ禁止の筈だぞ
Re: 出現法則も明らかになっていないのに、何故そんな事が言えるのか
Re: ガセだろ、ガセ。それも随分と性質の悪い
Re: まぁ、東京の魔法少女は粒ぞろいだって聞くし。万一出現しても大丈夫だろ
Re: ↑自画自賛乙ww
……
暁美ほむらは、そこの書き込みの一様な反応に溜息を吐いた。誰も本気にする者などいない。いつだって、人は"起こって"から後悔するというのに。
覆水は盆には返らない。
事前の対処ならばいくらでも出来る。しかし、事後にそれをひっくり返すことは出来ないのだ。
もはやかつての能力を失った暁美ほむらだからこそ言える。何事も、予断無く。「転ばぬ先の杖」の精神で動く事こそ、何よりも肝要なのだと。
何ら有益な新情報が持ち込まれてはいないことを確認して、暁美ほむらはワールド・ワイド・ウェブからログアウトする。
指で画面を弄り、グラフや図表、文字がびっしりと書き込まれた図鑑のようなアプリを起動する。
これは、古くから文献に乗る大型魔獣の特徴や出現傾向を記録した文字通りの「魔獣全書」で、L.O.Lのフリー配布物にほむら自身が手を加えたものだ。
ヒステリックなまでに情報が書き込まれたその全書は、それを見るだけでおおよその魔獣について把握できるという恐るべき代物で、ほむらにとっての一つの財産とも言える。
この情報が公開されれば、全世界の魔法少女は泣いて喜ぶことになるだろう。
もっとも、この全書を個人の私的財産としてしか見ていないほむらは、これをL.O.Lのデータベースに提供するつもりなど毛頭ないのだが。
頭をフルに活用し、現在東京に出現する魔獣の傾向を大体把握したほむらは、血中内のグルコースの欠如を感じて席を立った。
要は腹がへったのだ。
食事は、生命の維持にとってはもとより、精神の安寧にも深く関わっている。
美味い食事は心を安らかにし、満腹感は至福を与える。
彼女自身としては、胃に血が行くことでの脳機能の低下を嫌い、それほど満腹でいようとは思わないのだが。
しかし空腹によるイライラの発生は如何ともしがたい。
このままでは集中力を著しく欠如させると判断したほむらは、ある程度でも口にした方が良いと最寄りの食事処を検索することにした。
滞在する安宿から、徒歩20分程度のところにあるファミリーレストランに決める。ほいほいと姿を変えていく東京の地理を、40年ぶりに訪れる人物が把握している訳がない。
それでもこうやってあたりの経路をやすやすと把握できるのは、やはり携帯端末内蔵のGPS地図機能のお蔭だった。
こうして街を出歩くのに端末の世話になりっぱなしになっている事実を鑑みるに、ほむらも十二分に駄目になってしまっているようだ。
この事実を暗に突き付けられて若干気分を損ねながら、ほむらは夜なお暑い夜の東京へと繰り出したのだった。
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