73:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2012/12/27(木) 15:01:12.70 ID:c0RIlJVf0
「今宵も多くの子供達にぷれぜんとを配りましたが…… これほどまでにぷれぜんとの甲斐があった家庭は、他にありませんでした」
「にわかには信じられませんが…… この再会こそがプレゼント……」
「……あなた、そんなに騒いでご近所――え? あの……あ、電気――」
わぉ、パパにつられてママもやってきてしまいました。
私の姿を見て、おそらく目をぱちくりさせていることでしょう。
が、そんなことより――電気のスイッチへ手を伸ばそうとするのはどうにか阻止しなければいけません。
「な、なりません!」
持てる限りの演技力を絞り出し、凜とした声で制止します。
すると、びくりと驚いたようで、なんとか動きを止めてくれました。心臓に悪いです〜。
「……本来こうして姿をお見せすることすら許されぬ身、今はただ、仁奈の幸せのみを現実とし……わたくしのことは、ゆめまぼろしとしてお忘れになるよう――」
「――行き過ぎ!! 行き過ぎだ!! 戻れ!!」
私がどうにかこうにか間を持たせていると、びゅんと猛烈な風が背後を通り過ぎ、木場さんが必死にブリッツェンを御する声が聞こえてきました。
そうかと思うとすぐに風が戻ってきて……とんとんと私のお尻を叩く軽い感触。やっとお迎えが来てくれました〜。
「ふふっ、それでは次のお宅へ参るとしましょう……めりぃ、くりすます」
座ったままくるりと、ベランダの外へ体の向きを変えると、すぐ下には木場さんとブリッツェンがいました。
空いた座席へ、ぴょんと飛び降りると、木場さんから汗ばんだ手綱を受け取り――私たちはまた夜空へと旅立ちます。
「イ……サンタさーん!! メリークリスマスでごぜーますよー!!」
「あっ、こら仁奈……」
「ありがとうございましたー!! メリークリスマス!!」
「あなたまで……夢じゃないのかしら」
背後から聞こえてくるのはベランダの雪を踏む音、それに幸せそうな親子のメリークリスマス。
夜風に乗せて届くその声は、私の心に、大きな幸せとして染みいるのでした。
※ ※ ※
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