27: ◆2gMnW4GmGpwP[saga sage]
2013/01/04(金) 00:14:00.68 ID:IQ0//o8j0
「…ええ。その通りよ」
ずっと話していた‘ストレート髪のほむらちゃん‘は正解に辿りついた教え子に向けるような笑みを浮かべます。
「正確には、あなたが概念となった世界に、新しく生まれた私の祈り。
意図せずとも時間軸同士は影響し合うということなのでしょうね…。
その時間軸の‘私‘はあなたを喪った悲しみを覚えていたわ」
ほむらちゃんは少し俯きました。
時間遡行の能力を失っても、別の時間軸にまで届く哀しみを抱えていた‘ほむらちゃん‘。
そんなにもわたしを想っていてくれた…その事実に喜び半分、悲しみ半分です。
なぜならわたしは、概念化した後、幸福な気持ちに包まれていたからです。
「だから‘私‘は祈ったのよ…『まどかを人に戻す力が欲しい』って。…『人に戻して欲しい』じゃない辺り…‘私‘らしいわ」
ほむらちゃんは自嘲します。
結局…わたしは‘ほむらちゃん‘を苦しめているようです。
「結果がこれよ。‘私‘の存在枠をまどかに渡す。それがここに集められた‘私‘に与えられた主な能力」
そう言って顔を上げたとき、ほむらちゃんの表情はもう元に戻っていました。
「存在枠?」
「そうよ。まどかが人の世界に戻るためには、代わりに‘私‘がまどかの立場に入る必要があるの」
つまりそれは、わたしの代わりに‘ほむらちゃん‘が魔女を消し去る概念になるということでした。
「じゃあ…‘二人のほむらちゃん‘が消えたのは…」
尋ねる声が震えます。
「…人として存在する権利を失ったからよ」
躊躇いがちに…それでもほむらちゃんはきちんと言葉にしてくれました。
消えた…それは言葉通り、‘暁美ほむら‘という個人の消滅だったのです。
「こんなのあんまりだよ…。ほむらちゃん、酷過ぎるよ…」
想像以上に酷い結果に、わたしは顔を覆い俯きます。
‘ほむらちゃん‘を責めたくはないのに…責めずにはいられません。
わたしはただ、ほむらちゃんの、皆の祈りを無駄にしたくなかっただけなのに。
魔法少女の希望を絶望で終わらせたくなくて…あの祈りをしました。
それなのに、終わりのない孤独から救いたかった‘ほむらちゃん‘が、誰にも記憶されることのない存在へと変わろうとしていたのです。
最初の、‘三つ編みのほむらちゃん‘から口付けを受けた時点で、‘ほむらちゃん‘の消滅は決定事項となっていました。
今ここでわたしが拒絶しても、‘ほむらちゃん‘の概念化は避けられません。
それどころか、わたしと‘ほむらちゃん‘の祈りは中途半端に叶えられ、予測のつかない世界へと造り変えられるでしょう。
悪化はしても改善はありえないのは確かです。
…わたしに選択肢は与えられていませんでした。
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