過去ログ - ネミッサ「いつかアンタを泣かす」 ほむら「そう、期待しているわ」
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40: ◆sIpUwZaNZQ[saga]
2013/01/05(土) 15:54:31.14 ID:wOPwqajX0
翌日、下校する二人を捕まえに、ネミッサは行動を開始した。にこやかに挨拶を交わす。
今日はさやかの幼馴染へお見舞いにいくという。ネミッサもそれに同行を申し出た。表向きはただの付き添いだが、実際には護衛だ。病院に魔女が現れることがわかっている以上、それをさやかが発見する以上、そばを離れる訳にはいかない。
さすがに病室に行くのは面識のある二人だけ、とおもいきや、お見舞い自体はさやかだけだった。まどかはさやかの幼馴染への恋心を理解しており、気を利かせたつもりだった。個室の前、廊下のベンチで二人腰掛けながら雑談を交わす。

「上条くんはね、バイオリンが凄く上手なんだけど、その左手を怪我しちゃったの」

バイオリンの名手が左手を失う意味を考え、まどかは語る言葉を躊躇う。
消毒液の臭いが苦手なネミッサはちょっと落ち着かない風だが、まどかの話に興味を持った。一瞬、ヴァイオリンを弾く魔人が頭をよぎったネミッサは落ち着かないふりをして頭を振る。閑話休題。

「ひょっとして、よ。サヤカちゃんの魔法少女のお願い、ってそれ?」

「う、うん……ハッキリそうだと言ったわけじゃないけど……」

さすがのネミッサの持論もそれには困った。願いは自分で成すものだが、他人の体についてはそれを自分で成す訳にはいかない。ましてや現代医学でも治らないとなれば、やはり奇跡に縋りたくもなるものだ。

「ね? ネミッサちゃんでも無理?」

「ん……多分無理ね。一応医療の神様っていうのはいないわけじゃないけど……、サヤカちゃんの命と引き換えになるなら紹介はできないよ。それに、ツテもないしね」

まどかの小さなため息に、心が痛む。悪魔とはいえなんて自分は無力なのだろう。そして、それをさやかはもっと感じているだろう。あの真っ直ぐな心は、何かのきっかけがあればどこかに転がっていくだろう。ネミッサには恐怖だった。
そんな会話のさなか、当のさやかが帰ってきた。心なしか、表情が暗い。そして、そういえば……。

「あれ、さやかちゃん、いいの?」

時間が早いのではないか、という意味だ。まどかは時折付き合ってお見舞いにいくことがある。それに比べたら、ということなのだが。

「うん、なんか会えなかった」

照れ笑いでごまかすが、会えないにしては時間が長すぎ、会えたにしては短すぎる。何かトラブルがあったことはネミッサにも想像がついたが、切り出す事はできなかった。
病院からでて、駐輪場のわきを通る帰り道。皆一様に言葉少なだった。そんな中さやかが自分の視線の端にあるものに気づいた。壁に突き刺さるように、宝石に似た装飾品が光る。

「あ、あれなに?」

「グリーフ・シードだ」

急に現れたQBが声を上げる。不穏な空気にネミッサとまどかがさやかに近寄る。この珍獣はいつの間にここにいたのだろう。さやかのそばにいた? それともまどかか、ネミッサか?

(孵卵器……シード。種……卵……孵す……。……まさか、こいつが!)

嫌な想像が頭をよぎる。マミの死地に魔女の卵と孵卵器が同時にある意味に、背筋が凍り付く。そして鎌首をもたげる怒り。だがそれをここでこいつにぶつけるのは得策ではない。今はマミの救出にリソースを全て投入するべきだし、ネミッサもそうしたかった。こいつの始末はあとだ。

「今にも孵化する。ここから離れた方がいい」

「処分できないの?」

「僕にも無理だ。孵化は止められない」

病院という場所柄、人の負の感情が集まる。グリーフ・シードというものは周囲のそれを集める特性があり、それが孵化寸前まで溜まっているらしい。そして、病院でそんなことが起きれば、魔女は医療従事者や患者、その家族に牙をむくだろう。慌てて電話をかけるまどか。だが呼び出し音だけでマミに連絡ができない。

「マミさんに教えないと!」

焦るまどか。一方のさやかはそれよりも若干冷静に行動を起こす。だが、その行動が評価できることとは限らない。

「私、ここでグリーフ・シードを見張る」

これには二人も唖然とする。それは結界内に一人で残ると云う意味だ。こうなるとこの子はテコでも動かない。それに気づいたネミッサは、同時にほむらの指示の真意に気づいた。ほむらはこのことを言っていたのだと。となればネミッサの次の行動は一つだ。意を決しネミッサも宣言する。

「アタシも見張る。いいよね、サヤカちゃん」

「うん、ネミッサがいるなら平気」

「まどかはマミさんに連絡し続けて!」

結界内では携帯は恐らく使えない。まどかのみが結界の範囲外にでて、マミへの連絡を行う。それはまどかだけ安全なところに逃げることと解釈したためか、まどかが躊躇う。

「お願い、マドカちゃん。マミちゃんが来たら、急いでここに連れてきて。アタシが絶対、サヤカちゃんを守るから!」

逡巡ののち、まどかは決心をして病院外に走り出す。そこに残ったのはさやかと、ネミッサ、そしてQB。

「さやか。最悪の場合、僕も契約の準備がある。魔法少女となって戦ってくれ」

ネミッサは本気でQBを感電死させようかと思った。この期に及んでこいつは契約のことしか無いのか。しかも自身の命と引き替えに。最悪のセールストークに吐き気すら覚える。最も邪悪なものは、善良な無知に付け込むことだという。こいつはさやかへ重要な説明を隠すことで無知を作り、そこに付け込んでいる。
いつかこいつを排除しなければならない。ネミッサは方針を決めた。



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