過去ログ - ネミッサ「いつかアンタを泣かす」 ほむら「そう、期待しているわ」
1- 20
6: ◆sIpUwZaNZQ[saga]
2013/01/04(金) 20:53:01.22 ID:yAr9XARu0
「アンタに害を及ぼすつもりはないわ。むしろお詫びしたいくらいなんだけど」

「……面会時間が終わるわ。長居されると詮索される。そろそろ出ていって」

「……ホント聞く気無い。わかったわよ。けど、アンタ相当な訳ありでしょ」

端正な顔にシワが寄る。浮かんだのは微かな怒りと、当惑

「大体あれでしょ、さっきの宝石みたいなの、『魂』だよね」

鈍いネミッサでも感じるほどの殺意が、この華奢な少女が放っているのが信じられなかった。ひりつくような明確な憎悪と嫌悪が病室を包む。だが同時にそれは、少女がネミッサに関心を持ったとも取れる。好きの反対は無関心という。では怒りであれ好意であれ、無関心でない限り会話の余地があるということだ。少女は『なぜネミッサがそれを知ってるのか』に関心を持ったのだ。

「だって魂大好きな悪魔だもん、みりゃわかるわよ。ただ、だいぶ変質させられているみたいだけどね。私らだって、あんな禍々しいことしない」

「人間を食い物にするのなら同じことよ」

「そういうやつもいるよ。アタシも今そうしたし。……人間の仲間がいるから、自分がやったこと許されることじゃないと思ってるよ。でもさ、それしてはアタシの謝り方軽すぎたよね、ごめん」

少女は目を大きく見開いた。歯を食いしばり、表情が崩れそうなのをこらえていた。同時にここが交渉の余地がある、誠に勝手な話だが、ネミッサはそう感じた。もう怒らせてやれと投げやりに言葉を続ける。

「さっきの、アンタの知り合いの魂でしょ」

今度こそハッキリした感情が、少女から放たれる。だがネミッサも退かない。いまここで諦めたら、願いは果たせないと、信じて疑わない。視線を逸らさず、じっと見つめ返す。
こんな表情でなければ男女構わず憧れたであろう美貌は、見るも無残に歪んでいる。怒り、憎悪、そして、悲しみ。だがそれは徐々に収まり、鉄面皮に陰気な目つけて見つめ返す。その切替は見事と言えた。

「そんなもの、どうだっていいわ」

ここが分水嶺だっただろうか

「そんなものを、大事にとっとくはずないでしょ」

沈黙。

「アタシは魂を食ったけど、思いまで食い散らかしたわけじゃない」

沈黙、そして少女は唇を噛み締める。血がわずかににじむ。

「多分思いは同じ。アンタの力に、ならせてもらえない?」

少女の頭なのかは怒りと、それを押さえつける損得勘定が渦巻いていた。『いままで』こんなことは経験がなかった。こんな闖入者の存在など経験したことがない。そしてそんな人物に秘密を暴かれることも。
だが一方で、自分の状況を打破できるものかどうかの計算もあった。だが、今までの繰り返しの中で、予定外のことが全くなかったわけではない。それらを観察し、利用できるなら利用し、できないなら排除してきた。どうせ、失敗しても最悪自分はやり直せるわけなのだから。

「いいわ。貴女が何者であれ……利用させてもらう。せいぜい役に立つことね」

ようやく銃口が下がった。ネミッサは溜めていた息をようやく吐いた。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
387Res/672.16 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice