過去ログ - 京子「萌ゆる百合の花も、枯れれば醜くありけり」
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16:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:44:10.19 ID:0s1iP1/no
「京子は、ずっと眠ったままなんだってさ。笑っちゃうよね。だって、身体には傷一つないんだから」
結衣は笑った。涙を零しながら。

精神が乖離していた。冗談じみた現実に対する、拒絶反応である。
泣いてよいのやら、笑ってよいのやら、結衣にはそれが、わからなくなり始めていた。
以下略



17:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:44:40.41 ID:0s1iP1/no
そんな中、ちなつが結衣を抱きとめた。崩壊する砂の城をせめて守る様に、強く、優しく。
結衣は驚愕した。
ちなつも、限界である筈だった。
それにもかかわらず、この精神が瓦解してしまわぬよう、こうして抱き締めてくれる、その強さに驚愕したのである。
同時にそれが眩しくもあった。
以下略



18:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:45:09.80 ID:0s1iP1/no
ちなつは何も語らなかった。
しかし、その両腕から伝わるのはこれ以上無いほどの愛である。
その慈しみが明らかであればそうであるほどに、結衣の弱さは曝かれるのだ。
ただ今は、まるで許しを乞う羊のように、その優しさに浸っていたかった。
労りと偽りはよく似ている。
以下略



19:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:45:48.35 ID:0s1iP1/no
その時、よぎった。
一週間前のあの出来事である。
鮮明に蘇るのは、腕の感触。
京子のか細い身体。そして、こみ上げる痺れ。
ーーーーそうだ。あの時。
以下略



20:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:46:32.35 ID:0s1iP1/no
ちなつの抱擁を受け入れることなど、不可能であった。
結衣は腕を振り払って
「ごめん。今はそういう気分じゃないんだ」
と一言だけ呟き、部室を出た。

以下略



21:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:47:01.74 ID:0s1iP1/no





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22:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:47:28.65 ID:0s1iP1/no
どこに向かうでもなく、ただひたすら、何かから逃げるように。
しかしその何かは、まるで真夜中の月のように、決して遠ざかりはしない。
悲しみに食い破られた胸の穿孔は、常にその少女と共にある。
それは影にも等しかった。
走り去る背中すら、後悔と侘しさの化身のようだった。
以下略



23:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:48:21.07 ID:0s1iP1/no
一歩踏み出す度に積み上がるのは、己の弱さを許してしまった敗者の傷跡である。
背中には、目に見えない無数の切創が痛ましくも刻まれていた。
自分は何故逃げているのか。
その理由さえも、遠ざけてしまいたかった。



24:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:48:56.29 ID:0s1iP1/no
己の無力さが鮮明に浮かび上がる。
見るに堪えなかった。
目の前の現実に対して、抗う術を持たない自分という存在を、直視できなかったのだ。

世界は嗚咽に包まれた。否、構築されていた。
以下略



25:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:49:22.72 ID:0s1iP1/no
息が切れるまでとばしたところで、どこまで行っても闇が広がる。

苦しんでいるのは、他でもない自分自身なのだから。


以下略



26:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/06(日) 20:49:49.00 ID:0s1iP1/no
朦朧とする意識の中であかりは、いっそのこと消えてしまいたい。と思っていた。
彼女は生まれて初めて、己の存在を否定する。

自分に何ができただろうか。結衣を慰める事。励ます事。ただ何も言わず寄り添う事。その全てが叶わない。
あかりは誰よりも大人だった。故に、それ理解してしまうのだ。
以下略



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