過去ログ - 京子「萌ゆる百合の花も、枯れれば醜くありけり」
↓
1-
覧
板
20
8
:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]
2013/01/06(日) 20:38:39.09 ID:0s1iP1/no
マンションから道路へと飛び出した京子を、大型トラックが撥ねたのだ。
結衣は、その瞬間を克明に目撃してしまった。
京子の体が横っ飛びに、少なくとも5mは宙を舞って、アスファルトに激突する。
それを、網膜に焼き付くようなスローモーションで、余すところなく、見た。
それは夢だと思った。しかし、一向に回復しない息切れが、残酷にも現実を突きつけた。
以下略
9
:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]
2013/01/06(日) 20:39:34.77 ID:0s1iP1/no
結局、大型トラックの運転手が119番通報し、救急車が京子を乗せて走り去るまでの間
結衣はただ茫然と立ち尽くしていた。
そのうちに膝から力が抜け、その場にへたり込んだ。
10
:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]
2013/01/06(日) 20:40:18.96 ID:0s1iP1/no
「嘘だ」
救急車やパトカーがやって来た騒ぎに、マンションの住人達が野次馬の如く群がった。
その喧噪はやはり、現実のものである。
まるで早回しのシネマを見るように、結衣の思考は全く追いつかなかった。
つい先程、京子を抱きしめたその腕の感触が、夜の冷たさに麻痺していく。
以下略
11
:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]
2013/01/06(日) 20:40:56.15 ID:0s1iP1/no
「結衣先輩」
ノイズの様にちらついた意識は、ちなつの声に呼び戻された。
「ああ、ごめん。少しぼーっとしてた」
結衣は乾いた笑みを浮かべて言った。その笑みに、ちなつはたじろいだ。
憔悴しきっていたのである。目の下には深いくま。掠れた声。
以下略
12
:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]
2013/01/06(日) 20:41:26.47 ID:0s1iP1/no
「ごめん。もう無理だよ」
そんな結衣の姿を見たあかりは、それだけ言い残し、部室を後にした。
―――――――見るに堪えない、ということだろう。
結衣はあかりの後ろ姿を見送りながら、自らを嘲笑した。
以下略
13
:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]
2013/01/06(日) 20:41:54.60 ID:0s1iP1/no
「昨日、京子の病院に行ってきた」
「……」
ちなつは返事をしなかった。
結衣はそれでもなお、咎人が己の罪を告白するように、陰鬱な調子で言葉を紡いだ。
以下略
14
:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]
2013/01/06(日) 20:42:27.55 ID:0s1iP1/no
京子の容体についてである。
目立った外傷は、ない。
しかし、頭部をアスファルトに強打した事による外傷性のくも膜下出血。その血が前頭葉を圧迫している。
依然として意識不明の昏睡状態。
幸い小脳が機能していることにより、かろうじて生き永らえている。
以下略
15
:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]
2013/01/06(日) 20:43:03.18 ID:0s1iP1/no
結衣がうわ言の様に喋り続けるのを、ちなつはただ黙って聞いていた。
やがてそれらを総括する様に結論を告げる。
「医者によれば、意識が戻ることは万に一つもないらしい」
以下略
16
:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]
2013/01/06(日) 20:44:10.19 ID:0s1iP1/no
「京子は、ずっと眠ったままなんだってさ。笑っちゃうよね。だって、身体には傷一つないんだから」
結衣は笑った。涙を零しながら。
精神が乖離していた。冗談じみた現実に対する、拒絶反応である。
泣いてよいのやら、笑ってよいのやら、結衣にはそれが、わからなくなり始めていた。
以下略
17
:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]
2013/01/06(日) 20:44:40.41 ID:0s1iP1/no
そんな中、ちなつが結衣を抱きとめた。崩壊する砂の城をせめて守る様に、強く、優しく。
結衣は驚愕した。
ちなつも、限界である筈だった。
それにもかかわらず、この精神が瓦解してしまわぬよう、こうして抱き締めてくれる、その強さに驚愕したのである。
同時にそれが眩しくもあった。
以下略
18
:
VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
[saga]
2013/01/06(日) 20:45:09.80 ID:0s1iP1/no
ちなつは何も語らなかった。
しかし、その両腕から伝わるのはこれ以上無いほどの愛である。
その慈しみが明らかであればそうであるほどに、結衣の弱さは曝かれるのだ。
ただ今は、まるで許しを乞う羊のように、その優しさに浸っていたかった。
労りと偽りはよく似ている。
以下略
47Res/18.34 KB
↑[8]
前[4]
次[6]
板[3]
1-[1]
l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。
過去ログ - 京子「萌ゆる百合の花も、枯れれば醜くありけり」 -SS速報VIP http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/kako/1357471994/
VIPサービス増築中!
携帯うpろだ
|
隙間うpろだ
Powered By
VIPservice