過去ログ - エルフ「……そ〜っ」 男「こらっ!」 2
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64:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:23:51.90 ID:nNWfOeT40
 そして、ここ数日の疲れからいつの間にか意識を失い眠っていた男。真っ暗な世界が広がるなか、彼はふと自分の意識だけは妙にはっきりしていることに気がつく。
 少ししてこれは夢だと男は把握する。だが、そうわかったところで身体を動かすこともできず、ただ単に意識がはっきりとしているだけの状態、何もすることはできない。いつになったらこの奇妙な夢世界から解放されるのかと思っていると、そんな彼に不意に声をかけるものがいた。

?「……あなたには蘇らせたい人がいますか?」

以下略



65:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:24:40.79 ID:nNWfOeT40
どこまでも女々しい自分の心に呆れ、ため息を吐き出す男。そんな彼に不思議な声は何度も問いかけ続ける。

?「……叶えましょう、その願い。ただし、対象は一人のみです」

男「……本当に叶えてくれるって言うんならありがたい話だよ。代価は何もないのか?」
以下略



66:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:25:07.02 ID:nNWfOeT40
男「……僕、は」

 脳裏に浮かぶ一人の少女。かつて彼の前を歩いていた女性でも、ともに笑いあった仲間でもなく、自分の半歩後ろに立ってずっと背中を見続けてくれた少女。

男「望むなら、願いが叶うのなら……たとえ夢だとしても彼女に会いたい。それがたとえ、この世の理に逆らうことでも。そのせいで、辛い思いをすることになったとしても。
以下略



67:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:25:52.59 ID:nNWfOeT40
 まだ日が昇り始めたばかりの早朝。ほとんどの人は未だ眠りについている。だが、今日はほとんどどころか宿泊施設の外に、まるで人の気配がしなかった。
 違和感を覚えながらも、目を覚ました男は桶に貯められた水を手ですくい、顔を洗った後、日課になりつつある門の解析に向かった。遺跡の地下へと続く階段をゆっくりと進んでいく男。その道中、彼は地下に漂う空気に異変を感じた。

男「……なんだ、これ。魔力の気配を全く感じない」

以下略



68:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:28:09.26 ID:nNWfOeT40
?「あなたが選んだ、願いのもとへ」

 不思議な声がそう告げるとゆっくりと門が開いていく。あまりにも非現実的な光景に思わず唖然とする男。この状況に男が戸惑っているとそんな彼の後ろから一人の少女が現れた。

褐色エルフ「行かないの、お兄さん?」
以下略



69:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:28:40.63 ID:nNWfOeT40
 見ればその空間には中央にぽつんと一つ柩が置かれているのみで他には何も存在しなかった。男の発動させた魔法により照らされた室内の壁一面にはよく見れば過去に描かれたと思われる壁画が存在した。

男「なんだ、これ?」

 壁画にはエルフと思しき長い耳をした者、それから短い耳の人間と思われる者が強大な何かと戦っているような絵が描かれていた。敵の姿は黒く塗りつぶされわからない。だが、その絵だけでもその相手がいかに強大で恐ろしいものかという迫力だけは伝わってきた。
以下略



70:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:29:10.03 ID:nNWfOeT40
褐色エルフ「……あの時と同じ。今、この世界にも黄昏が蘇っている。だから今、この世界には再び導者と救世主が必要なの」

男「どういうこだ? 褐色エルフ、君は一体何を言っている?」

褐色エルフ「ふふ、古いお話しだよ男。かつてこの世界を襲った強大な敵の話しをあたしはしているだけ」
以下略



71:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:29:35.22 ID:nNWfOeT40
男「話はわかった。けれど、それが僕にどう関わってくるんだ?」

褐色エルフ「言ったでしょ、導者は人とエルフを繋ぐものだって。だからこそ、導者の資格には二つの種族を心から愛する者でなければならない。けれど、未だ互いに憎しみを抱いているこの時代にはそんな人間は数少ない。
 そんな中、導かれるようにあなたはここに現れた。ある意味これは運命のようなものだよ」

以下略



72:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:30:06.85 ID:nNWfOeT40
男「けど……僕は。もう戦いなんて……」

 過去の出来事を思い出す男。かつて憎しみに任せ戦い続けた結果、彼の手は血で濡れ憎んだ者に自身がなるところであった。それ以降戦いの場からずっと身を遠ざけ、エルフと共に平穏な世界で幸せな日々を過ごしていたのだ。
 そんな彼の前に今重い選択肢が突きつけられていた。導者というものになり、世界を救うための戦いへと再び身を投じるか、全てを見なかったことにしやがて訪れる死を静かに受け入れるかという選択肢が。
 そのどちらも簡単に受け入れることのできないものである。なぜなら、それは人一人が背負うのには重すぎるものであったから。
以下略



73:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:30:56.03 ID:nNWfOeT40
 男は悩む、差し出された二つの選択肢に。どちらを選んでも彼の未来には苦難が待ち受ける。けれども、選ぶのなら後悔のない道を歩みたい、彼はそう思った。

男「……なら、答えは決まってるじゃないか。今まで何度後悔したと思っているんだ。もう取り戻すことができない彼女に、あの時伝えることができなかった言葉を伝えられるなら、どんな運命だって背負ってみせる。僕の分だけじゃなく、彼女の分だって……」

 そうして男は褐色エルフの元へゆっくりと近づき、選んだ答えを告げた。
以下略



74:吟遊詩人[saga]
2013/02/15(金) 15:31:35.67 ID:nNWfOeT40
 目を瞑り、記憶を辿り彼女の姿を男は思い出す。
 初めは互いのことを嫌っていた。男はエルフを憎むことで自己の心に平穏をもたらし、旧エルフは奴隷という境遇になったことへの悲しみや、戦争により様々なものを失ったことにより人という種族を嫌っていた。
 しかし、いつからか旧エルフの心に変化が現れた。男の心の奥底にある優しさという本質に触れ、次第に心惹かれていった。そして、そんな彼女と過ごしていくうちに男の心もまた彼女へと惹かれた。
 思い出すのは日だまりのような笑顔を浮かべる彼女の姿。いつだって明るくて、一生懸命で、男の心に光を与えてくれた彼女の姿。
 褐色エルフが告げる言葉と共に室内に凄まじい量の魔力が満ちていく。それらは中央に置かれた柩へと集約されていった。
以下略



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