過去ログ - かずみ「from Connect to Luminous」
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1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/01/21(月) 02:02:37.86 ID:E/g+nYa6o

――初めて意識が覚醒するその瞬間を、感触を、感覚を、彼女はその身と心で実感した。

  彼女は、ゆっくりとまぶたを開いた。
それまで瞼で守られていた彼女の瞳を得体の知れない液体が余すことなく覆っていく。
瞳を液体に晒した事で生じた刺すような痛みを感じながら彼女はひたすら耐え続ける。

  それは数秒、あるいは数分、もしかしたら数時間に及ぶかもしれない。

  目に走る刺激に慣れると、彼女は目の前の光景をうつろなその眼に焼き付けた。

  液体で満たされた、ガラスの子宮。
それは彼女が最初に目にした光景であり。彼女が最初に存在した場所でもあった。

  彼女は次に水分を吸いすぎてわずかに膨れた唇を開いた。
口の中に半透明の液体が押し流される。が、それも一瞬だ。

  彼女は何事も無かったかのように口を開き続けた。
その表情に動揺や苦しみのそれはまったく表れない。
なぜなら彼女の胃と肺はすでに液体で満たされていたからだ。
何事も無かったかのように、ではなく、本当に、何事も無かったのだ。

  呼吸がしたい。
  酸素が欲しい。
  気持ちが悪い。

  そういった衝動や感情を彼女は一切持っていなかった。

  彼女はまるで機械仕掛けの玩具のように、ガクガクと顎を揺らして唇を閉じる。

  鼻に溜まった水を出しながら、彼女はぼんやりと、うつろな眼でガラスを見つめる。
ガラスに映し出された、一糸纏わぬ少女の姿を眺める。


――誰だろう、と。

  それは純粋な興味であり疑問だ。
ガラスの子宮の中には娯楽も暇潰しも在りはしない。
ただただ液体に身を浸し続けることしか出来はしない。

  だから彼女は自然に興味と疑問を抱いた。
正面のガラスに映る少女へ興味の視線を注ぎ、好奇の心からその正体を探ろうとした。


  そして気付く。

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