11: ◆T6URQJJiS6[sage]
2013/01/30(水) 02:39:19.79 ID:nBLz0ahUo
人の世が栄え、鉄の馬がそこかしこを駆け抜ける世の中になって妖怪たちはそれはもう困り果てたそうな。
あんなにか弱かった人間が妖怪を恐れなくなっていったのだ。
――俺は生まれちゃいねぇが、相当苦労したらしいぜ。
12: ◆T6URQJJiS6[sage]
2013/01/30(水) 02:40:48.86 ID:nBLz0ahUo
ある者たちは山に。
ある者たちは海に。
ある者たちは谷に。
そしてある者たちは人の住む町の暗がりに。
13: ◆T6URQJJiS6[sage]
2013/01/30(水) 02:42:02.77 ID:nBLz0ahUo
そんな韋駄天も寄る年波には勝てないのか、ついに膝をつくことになってしまう。
相手は東海道新幹線0系、通称『こだま』
日本に初めてできた新幹線だ。
14: ◆T6URQJJiS6[sage]
2013/01/30(水) 02:43:03.41 ID:nBLz0ahUo
その時のハヤブサの顔は今でも妖怪の間では語り草だ。
時代は変わったのだと、誰もが痛感させられたらしい。
江戸が終わり。
15: ◆T6URQJJiS6[sage]
2013/01/30(水) 02:44:18.23 ID:nBLz0ahUo
しばらくして戻ってきた彼の手には、どこからくすねてきたのか大吟醸が握られていた。
どこまで話したか、などととぼけつつコップを片手に手酌をする彼。
ハヤブサが負けたところだと話してやればわざとらしく頷いてきた。
16: ◆T6URQJJiS6[sage]
2013/01/30(水) 02:45:44.92 ID:nBLz0ahUo
こだまに負けて以来、だんまりを決め込んでいた彼の目に浮かぶのは赤々と燃える灼熱の炎。
男ハヤブサ120歳。
還暦を二週してなお年老いた体は燃え尽きてはいなかった。
17: ◆T6URQJJiS6[sage]
2013/01/30(水) 02:47:09.42 ID:nBLz0ahUo
8月10日、真夏の炎天下、雲一つない晴れ晴れとした空の下。
若い頃から愛用していた長ハチマキを身に着けた飛脚姿の男が一人。
浅黒く焼けた肌。スラリと伸びた細い手足。銀色に逆立つ髪の毛。
18: ◆T6URQJJiS6[sage]
2013/01/30(水) 02:48:18.39 ID:nBLz0ahUo
結果はどうなったかって?
それはまぁ、彼の話が終わっていないからまだ言えないな。
なにせ彼ときたらカレイの小骨が喉に刺さったといって今は台所で必死にご飯を丸呑みしているんだ。悪いが笑ってしまいそうだよ。
19: ◆T6URQJJiS6[sage]
2013/01/30(水) 02:48:54.83 ID:nBLz0ahUo
20: ◆T6URQJJiS6[sage]
2013/01/30(水) 02:49:46.74 ID:nBLz0ahUo
【韋駄天ハヤブサ】
21: ◆T6URQJJiS6[sage]
2013/01/30(水) 02:50:13.55 ID:nBLz0ahUo
おやすみなさい
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