過去ログ - 律「月はみてる」
1- 20
4: ◆epXa6dsSto
2013/02/09(土) 19:22:17.67 ID:juBpRnU+0
言い終わった瞬間、私は澪から目を逸らしてしまう。
我ながら情けないと思うけど、思い出すとどうしても顔が熱くなっちゃうんだよな。
本当にこれでいいのか、って不安になっちゃうんだ。
今日――、だけじゃなく、結構前から、私達は梓に贈る曲を練習している。
タイトルと歌詞はまだ完全には決まっていないけど、大体は完成している私達の答辞の歌。
卒業式の後の放課後――って言うのかどうかは微妙だけど、とにかく――、
私達はその歌を来年から軽音部を盛り立てる梓に贈る。
それは私が心からやりたい事だし、梓が少しでも喜んでくれると嬉しいと思ってる。
だけど……、な……。

私は夕方まで河原で練習してた自分の歌声を思い出して身悶える。
ああいう歌い方でよかったのか、正直、自信が持てない。
ドラムの練習は終わってるし、演奏だけなら問題無く梓に贈れるはずだ。
でも、歌はなー……。
私はライブでコーラス以外で歌った事が無い。
ボーカルは澪と唯に任せっ切りだったし、
自分がボーカルを担当する歌を作ろうとも思わなかった。
別にそれに不満も疑問も無かったし、それでいいんだって思ってた。

だけど、梓に贈る歌の練習を始めた瞬間、唯が急におもちゃのマイクを向けた。
何の相談も無く、何の疑問も無く、とても自然に私にマイクを向けていた。
澪もムギもその事に対して、不思議に思ってなかったみたいに見えた。
皆、私も歌うのが自然だって思ってたんだ。
思ってくれてたんだ。
出来る事なら私だってそうしたい。

でも、私には歌の実力も経験も全然足りないんだ、って感じてる。
ボーカルをやってくれてた澪や唯は勿論、
一曲だけメインボーカルを務めた事があるムギの歌声も見事で綺麗だった。
そんな皆の中に私が混じってもいいのかな、ってどうしても思っちゃうんだよな。
梓に贈る大切な曲を失敗させちゃうんじゃないかって、……さ。


「うん、まだまだだな」


意外にもあっさりと澪は私の疑問に応じた。
はっきり言うなよー、とはちょっと思ったけど、何となくそれが嬉しかった。
うん、やっぱり私の歌声はまだまだなんだよな。
それを自覚させてくれただけでも、澪はいい奴だ。
少しだけ落ち込んで、少しだけ肩の力が抜けたのを感じながら、私は逸らしていた視線を澪の方に戻した。


<<前のレス[*]次のレス[#]>>
26Res/24.71 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice