過去ログ - 律「月はみてる」
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9: ◆epXa6dsSto
2013/02/09(土) 19:24:50.54 ID:juBpRnU+0





「いやー、懐かしいなー、すっかり忘れてたけどさ」


言いながら、私は草むらに軽く寝転んだ。
陽が長くなって来ただけあって、意外と寒さは感じなかった。
少し背の高い雑草も上手く風除けになってくれてるみたいで、逆に温かいくらいだった。


「おいおい、服が汚れるぞ、律」


お小言を言いながらも、澪が私の隣に腰を下ろす。
手を伸ばせば届く澪の腰に腕を回せる距離――。
あっ、と思った。
これも今の今まですっかり忘れてた事だけど、これが子供の頃の私達の定位置だったよな。
私が緩やかな山道の草むらに寝転んで、澪が少しだけ不安そうに私の隣に座って――。
どうして澪は私のこんなすぐ近くに座るのか疑問だったけど、
今思うと私が山道から転げ落ちそうになった時に、掴んで止めてくれるためだったんだろうな。
大した傾斜じゃないんだし、そう転げ落ちやしない――はずだったけど、
そういや子供の頃、澪の前で派手にゴロゴロ転がり落ちちゃった事があったな……。
あれは痛かった……。

でも、痛いのより何より、その時に澪が大泣きしちゃったのが辛かった憶えがある。
あの時、澪は擦り傷だらけの私を私の家まで、自分の服が汚れるのも構わずに運んでくたんだよな。
大泣きしながら、綺麗な洋服を私の血や泥で汚しながらも気丈に――。
思い出してみれば、あの頃から私は澪に助けられてたのかもな。
照れ屋で怖がりな澪を助けているつもりで、逆に。
今日だってそうだし――。
思い出しながら澪の方を見ていると、澪は怪訝な表情を浮かべて言った。


「何だよ、律?
あ、今、思い出したけど、子供の頃みたいに転がり落ちるなよ?
あの時は大変だったんだからな?」


「何でもないって」って言いながら、私は澪に気付かれないように一人で笑う。
二人して同じ事を思い出してたんだ、って事が嬉しかったんだよな。
すっかり忘れてたはずが、ちゃんと私達の心の中には思い出として残ってる。
今もまだ、残ってるんだ。


「それならいいけどさ」


納得のいかない口振りではあったけど、すぐに澪の表情は柔らかい笑顔に変わった。
澪も懐かしく思ってるんだろう。
私達のこの秘密基地の事を。


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