1:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします
2013/02/11(月) 15:02:23.83 ID:FyZPuZNm0
少し、矛盾しているかもしれません。
安価じゃないです。
黒髪の女と金髪の男が歩いている。
夜空の下だ。月下に晒され、互いの姿が照らされている。
「じゃあ、東横さん、俺はここで」
「はい、さよならっす」
立ち止まったのは、バスの停留所の前だ。別れを告げ、ゆっくりと名残惜しげに女のほうが去っていく。
数度、振り返るたびに、寂しそうな笑みを男に向けて。
〇
炎天下だ。既に七月ともなれば太陽はその勢力を増し、勢いを強める。
汗が滴る。額の水滴を白のワイシャツの袖で拭い、男は一息をついた。金髪の男だ。端整な顔立ちは軽い歪みを見せ、息は喘いでいる。
「ああ、くそ、何で俺はこんなところに来ているんだか」
男はぼやくかのごとく呟く。
理由はあった。男はとある部活動に所属していた。麻雀部という。
清澄高校麻雀部。今年県予選を突破し、インターハイに出場することになった。弱小――、否"元"弱小部だった。
男はそこに所属していたが、男性部員は男一人しかいないが故に、ある種雑用ともいえる立場に存在している。男はそれをどうと思ったことはない。男自身、自身が弱いと理解しているし、女性に頼りにされるのは嫌いではない。
何より、女性に頼られるというのは男としてひとつのナルシチズムとでもいう何かをくすぐられるのは快感だ。
――まあ、それが雑用という立場というわけだが。
努力をしていないわけではない、入部してすぐに役は覚えた。符計算もできる。戦術とその理論も理解した。
されど、結局のところ――、圧倒的に経験が足りない。
「まあ、俺は俺のペースでゆっくり行けばいいさ」
男は息を整え、歩みを続ける。
と、
「わ」
「きゃ」
衝撃がくる。鈍く感じたそれは人と接触したものだ。当たったそれは軽く此方に損傷はないが、
「あたた……」
男の目の前に、一人女が尻餅をついていた。
ああ、と男は呻いた。
――少しボーっとしすぎたかな。
失敗したな、と思いつつ、男は手を差し伸べ、
「えっと、ごめん。立てる?」
声をかけた。
沈黙。
――あれ、俺何か間違えたことしたか?
思考の波が来る。対応を間違えたとは思わない。少なくとも紳士的な行為に分類されるはず――、はずだ。
「あ、あの」
声。控えめに女の声が来る。
「貴方は、私が見えるっすか?」
女の問いを不可思議に思いつつ、
「ああ」
肯定の意を示した。
「そ、それ本当っすよね? 実はからかったりしてるとかそういうオチじゃないっすよね!!!??」
「??? あ、ああ」
弾丸を髣髴とさせる勢いで女がまくし立てる。男は意図がわからない。
まあ、とりあえず――、
「と、とりあえずどこか座れるところでゆっくりしよう」
男は提案した。
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