5:5[sage]
2013/02/11(月) 15:06:01.79 ID:FyZPuZNm0
そもそも、いつから京太郎は自らが、他者のために動くことを是としているのだろうか、と思考する。
――ああ、そうだ。
あれは確かまだ、中学生のころか。
今だ、咲との仲が深くなっていない時期。接点が図書委員というだけの中だった時期。
放課後、一人、山積みとなった本に埋もれて読書をしている咲の隣に座った時だ。
京太郎もつられるように、何となく一冊の本を手に取った。
とったのは単純な自己啓発の本。タイトルはありきたり、内容は凡庸、ハードカバーで内容以上の値段。そんな本。
たまたまとったそれを、斜め読み、最初は捲る手もゆっくりだった。
しかし、捲るにつれてだんだんと速度は飛躍的に加速していく。
それを見つけたのは、いまだ自己形成段階の中学という時期だったからか、京太郎はあまりにもそれに影響を受けた。否、受けてしまった。
『あなたは本当に必要な人間なのか』
『必要とされる人間になりなさい』
端的に言えば、そんな内容。
しかし、その言葉が嫌に響く。
金槌でたたかれたような、そんな気分。
それからだろうか、京太郎が他者のために自らをすり減らすようになったのは。
○
まあ、それは、今となっては記憶の片隅にしまわれたモノ。
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