過去ログ - ビッチ・2
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107:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/13(水) 00:16:07.53 ID:X0l/dJT5o

「お兄ちゃんって、あんまり昔の記憶がないんでしょ?」

「うん。この間までは小学校低学年の記憶は全くなかったよ。だから去年父さんに聞かさ
れるまでは今の母さんが本当の母親だと思っていたくらいだし」

「あたしのことも覚えてないの?」

「おまえと別れさせられた記憶とか、公園で鳩を追い駆けているおまえを見守ってた光景
とかは少しづつ心に浮かぶようになったよ」

「そうか」

 奈緒がぽつんといった。

「まあ、記憶が戻ったっていう感じじゃないんだよね。むしろ、ある短い光景だけ思い出
せたっていう感じかなあ。つらい記憶を自己ブロックするような病気らしいんだけど」

 確か解離性健忘とかいうらしかった。

「お兄ちゃん、ママのことは覚えているの」

「・・・・・・前にさ、おまえと二人きりで自宅で過ごしていた記憶があるんだけど、そのとき
突然帰宅してきた女の人がいたような。多分、それが本当の母親なんだと思う」

「あたしはね、そのあたりのことは全部記憶にあるの。しかも鮮明に。今日はその話とか、
今のママとかあたしの家庭の話とかしようと思っていたんだ」

 奈緒が昨日話があるからと言っていたのはそういうことだったのだ。奈緒との仲がどう
なったのかが未だに自分でもよくわかっていなかったけど、昔の話を聞けるようなら聞い
てみたい。父さんと今の母さんとの仲違いの原因がつかめるかもしれない。それに今の僕
は昔の話を聞かされることに恐れを感じていなかった。一番つらかった奈緒のことを聞か
されて、自分でもその思い出の一部を思い出した以上、もうこれ以上のショックは受けな
いだろうと僕は思った。過去の話については玲子叔母さんからいろいろと聞かせてもらっ
てはいたけど、当時は叔母さんもある意味部外者で傍観者の立場だったから、叔母さんの
知識にも限りがあった。

「教えてもらえるなら聞きたいな」

 僕は真面目に奈緒に言った。

「うん。話すのはいいけどあまり時間はないよね」

 一瞬、早く僕に会いたがっているだろう明日香の顔が浮かんだ。でも、自分の過去をは
っきりと知りたいという欲望に僕は負けた。

「奈緒さえいいなら時間がかかってもいいよ。だから、全部教えてほしい」

 結局その方が僕と明日香のためにもなるのだと、僕は自分に言い聞かせた。


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