110:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/13(水) 00:22:42.67 ID:X0l/dJT5o
あのとき明日香とのトラブルを避けるために僕が早く家を出なければ、そしてあの朝突
発的な雨が降って奈緒が高架下で立ち往生しなければ僕たちは再会することすらなかった
はずだ。そういう意味では奈緒の言うようにすごい偶然と言えるだろう。
「あたしは毎年パパと面会していたから、お兄ちゃんがどこに住んでいてどこの学校に通
っていたかなんてパパから聞いて知っていたんだよ」
僕は虚を突かれた。玲子叔母さんの話で、実の両親と離れ離れになっている子どもたち
との面会権のことは聞かされていたけど、これまで僕はそのことをあまり真剣に考えたこ
とはなかった。とりあえず僕の方は母親と面会した記憶はないのだから。
「お兄ちゃんの家とか最寄り駅なんか全部パパから聞いてたもん。あたしはお兄ちゃんの
ことが気になっていたから、面会するたびにお兄ちゃんのことをパパに聞いたの。そして
お兄ちゃんと会いたいとも。でも、パパはお兄ちゃんのことは何も教えてくれないし、会
わせてもくれなかった。お兄ちゃんには昔の記憶がないから、あたしとお兄ちゃんが会っ
たらお兄ちゃんが混乱するからって」
父さんは奈緒にそんなことを言っていたのか。僕のことを心配してくれてのことなのだ
ろうけど、父さんが邪魔しなければ僕と奈緒はもっと早くに再会できていたのかもしれな
い。
「でもね。あたしはパパの家を知っていた。そしてお兄ちゃんがそこに住んでいることも。
だからパパに黙ってお兄ちゃんと会おうと思えばいつでも会えたの。本当にあたしがその
気にさえなればね」
「じゃあ、おまえはずっと僕に会いたくて、しかも会おうと思えば会えたってこと? そ
して父さんに言われたこと、僕の記憶喪失のこととかを気にしたからおまえは僕に会いに
来なかったってことなのか?」
「それだけじゃないの。ママにも釘を刺されていたからね。ママはパパに会う日は必ずこ
う言うの。『約束だから奈緒がパパに会うことは止められないけど、奈緒人に会っちゃだ
め。会うと奈緒と奈緒人が二人とも不幸になるから』って」
何で僕と奈緒が再会すると不幸になるのだろう。それに父さんも奈緒を僕に会わせなか
ったという。僕の実の両親が離婚してそれぞれ再婚家庭があって、それを守るために今さ
ら昔の付き合いを蒸し出したくなかったからなのだろうか。それにしてもお互いの家庭の
のことだけが問題なら、僕と奈緒が不幸になるとは言い過ぎのような気がする。
あれ? ふと僕は気がついた。奈緒は僕の家や最寄り駅を知っていた。そして会おうと
思えばいつでも僕を探し出せる状態だった。
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