135:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/03/19(火) 23:08:06.49 ID:5oVkFcZbo
それでも明日香が池山に会うのは危険だと思ったので、仲直りしてまだ僕に抱き付いて
いる明日香に対して、僕が一人で池山と会うと主張した。
「だめ。博之は前からお兄ちゃんのことが嫌いだから。それにお兄ちゃんが博之に殴られ
るなんてあたしはいやだもん」
確かに僕なんかでは池山に絡まれたら抵抗すらできないだろうけど、そういうことを妹
に、自分の彼女に心配されると結構真面目にへこむ。
「殴られるくらいですむなら我慢するよ。おまえや叔母さんが危ない目に会うより全然ま
しだと思うし」
明日香は何かを言い返そうとしたけど、結局口をつぐんだ。池山は自分や叔母さんに何
かをするような男じゃないって言おうとしたのだろう。でも、叔母さんにたしなめられ僕
と仲直りしたばかりの明日香はもう何も言わなかった。
翌日の日曜日、お互いに妥協しあった僕と明日香は結局二人で池山に会いに来た。
この日は池山の住まいの最寄のファミレスで待ち合わせをしていた。明日香が何と言っ
て池山を呼び出したのかはわからなかった。約束の時間にファミレスに入るとき明日香は
僕と繋いでいた手に力を込めた。
「明日香、こっちこっち」
金髪ピアスの男が喫煙席で煙草を吸いながら明日香に大声で呼びかけた。
明日香は困ったように僕の方を見た。
「彼、いつも喫煙席なんだけどそれでもいい?」
「あ、うん」
正直、このときの僕は緊張していたから煙草の煙りのことなんてどうでもよかった。
池山の向かいの席に明日香と並んで座ると、彼がむっとしたように明日香に言った。
「おまえさあ。座る場所違うんじゃんねえの」
「何で? あんた、何言ってるの」
明日香が強気な声で池山に言った。こういう強気な明日香を僕は久し振りに見た。昔は
僕に対してはいつもこういう声で話し掛けていたんだっけ。最近は明日香の甘い声ばかり
を聞かされていた僕はそう思った。
「おまえが会いたいって電話してきたんだろうが。それなのになんで俺の横じゃなくてそ
いつの横に座ってるんだよ」
不思議なのだけど、これだけ喧嘩っ早そうなやつがここまで僕に対して一切話しかけて
こない。もちろん今のところ殴られそうな様子もない。
このとき池山の向かいの席で僕と並んで座っていた明日香は、今だに僕の手を握ってい
たしそのことは池山にもわかっていたはずなのに。
「明日香の言うことを聞いたら、俺とまた付き合ってくれるっておまえは言ってたじゃ
ん? 俺、今一生懸命おまえに言われたとおりのことをしようとしてるのによ。何でおま
えはもう他の男と一緒にいるわけ?」
459Res/688.68 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。