185:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/04/07(日) 00:00:05.38 ID:ANCdE4y9o
「まあ、パパの気持ちはわかるよ。パパの言葉が正しいなら奈緒と奈緒人さんは血が繋が
っていないんだし、二人が結ばれることへの障害って何もないしね」
そうでもないか。あたしは麻季おばさんの過度なほどの奈緒への干渉を思い出した。
「奈緒のことが好きだというパパの気持が本当なら、パパももどかしくてしかたないでし
ょうね。いつ奈緒が奈緒人さんに奪われてしまうのか不安だろうし」
そう言った後であたしは付け加えた。
「もっとも、麻季おばさんが奈緒に対して男との付き合いを許すとも思えないけど」
「それはそうだね」
パパが安心したように言った。やっぱりパパは奈緒と奈緒人の仲が気になっているのか。
「安心している場合なの? 恋愛って障害があればあるほど当人たちは燃えあがっちゃう
かもよ」
「奈緒も奈緒人君も兄妹同士で結ばれるなんて非常識なことは考えていないだろ」
「・・・・・・パパ。自分の言っていることわかってる? 論理矛盾を起こしているよ」
パパは二重に間違えている。一つ目は彼ら自身だって自分たちが兄妹ではないなんて知
らず、そのことで悩んでいるだろうということだった。麻季さんがそれを隠し、パパも麻
季さんのその思考に加担していたのだから。それでも奈緒は実の兄であると思い込んでい
る奈緒人さんへの執着を捨て切れていないのだ。
もう一つはパパ自身の価値観というか、行動との不整合だった。パパは血縁なんて意に
も介さずに妹の怜奈叔母さんを愛した。そして同じく自分の実の娘であるあたしに対する
欲望を抑えることすらせず、あたしを自分の女にした。そのパパが兄妹同士の関係を非常
識だなんて、いったいどの口から言えるのだろう。ダブルスタンダードもはなはだしい。
それでも、このあたりでそろそろあたしはパパに優しくしてあげることにした。二つの
選択肢に対してあたしはもう迷わなかった。
「パパがあたしの相談に乗ってくれるなら、あたしも協力してあげてもいいよ」
「いつだっておまえの味方になってきたじゃないか」
「そうだけど。こんどはちょっとだけあたしにとっては重いことをしなきゃいけないし。
あたしは自分の従姉妹をパパに売ることになるんだよ」
「パパはそんなことは望んでいないよ」
「うそ」
パパはあたしの視線から目を逸らした。それはあたしがパパに勝った最初の瞬間かもし
れなかった。
世の中には二種類の人間がいる。価値のある人間と無価値な人間と。
あたしにとってはパパや奈緒は価値のある人間だった。同時に、あたしを抱いたことの
ある、そして今病院で死にかかっている池山や、あたしが好意を持つふりをした奈緒人さ
ん、それに自称あたしの親友の明日香は後者だ。もっと言えば麻季おばさんや鈴木のおじ
さんだって無価値な人間のグループに入る。
価値のある人間同士は仲良くすべきなのだろう。それ以外の人には関心はない。死んだ
って構わない。
「ねえ」
「うん?」
「今週中に奈緒をこの別荘に招待したいんだけど」
「・・・・・・どういう意味だ」
「パパの考えているとおりの意味よ。でも一つだけ約束して。パパは奈緒を好きなように
していいけど、そのあとであたしが奈緒とどんな関係にあっても嫉妬しちゃ駄目よ」
「しないけど。おまえは何を言いたいんだ」
「あたしに嫉妬しないでって言いたかったの。でも奈緒にも嫉妬しちゃ駄目だよ」
パパは不意にあたしの言葉の意味に気が付いたように笑った。
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