過去ログ - ビッチ・2
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196:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/05/09(木) 23:32:09.63 ID:eJmhesKmo

「知ってるよ」

「知ってるって・・・・・・奈緒ちゃんかわいそうに」

 今朝の奈緒は僕と明日香のことを責めなかった。そのことに僕は安堵したのだけれど、
彼女がすんなりと受け入れてくれたはずがないことは自分にもよくわかっていた。だから
奈緒がかわいそうだという女さんの感想は的はずれなものではない

「本当にどうしちゃったの。いったい何があったのよ。君は何か何か勘違いしているよう
だけど、複数の女の子と付き合うことなんて格好いいことでも何でもないのよ」

「それに、明日香ちゃんは血が繋がってはいないかもしれないけど、法律上は同じ戸籍に
入っている家族でしょ。妹と付き合うなんておかしいよ。どう考えても奈緒ちゃんの方が
奈緒人君には似合っているのに」

 奈緒も明日香も妹なのだ。ただ、奈緒は血の繋がっている実の妹だ。浮気とか複数の女
の子と付き合っている自分に酔っているとかそういうことじゃない。

 でも、本当にそうなのか。僕はふと考えついた。奈緒を抱き寄せた自分、明日香と体を
重ねた自分。よりによって自分の大切な叔母さんにまでキスを強要した自分のことを。客
観的に見れば女さんの言っていることは間違っていないのかもしれない。

 奈緒のことを話さない限り、僕は急にもて出していい気になっている不誠実なキモオタ
扱いだろうけど、それは実は正しいのかもしれない。そこに反論する権利なんてきっと僕
にはないのだろう。

「何か言いなさいよ」

 黙ってしまった僕に女さんが詰め寄った。自分の不名誉はもう拭いようがない。この上
叔母さんとのことまで知ったら、僕は二人の友人を失うことになるのだろう。

 ただ、明日香への兄友と女さんの印象だけは誤解であり偏見でもある。そこだけは譲れ
なかった。

 そこでホームルームが始まってしまったので、女さんと兄友の追及は中途半端なまま終
了した。混乱する感情を持て余しながらも、今日帰宅して自分がすべきことを僕は思い出
した。

 僕はもう彼らを気にせずに、ただ一つのことだけを考えていた。実の兄であると知って
もなお、僕のことを好きだと言った奈緒の言葉を正直に明日香に伝えよう。そのうえで、
明日香が僕を受け入れてくれるなら、もう二度と僕は明日香を離さない。

 たとえ女さんと兄友に絶交されても、父さんと母さんが離婚したとしても。



 その日がオープンスクールの前日であることを僕は忘れていた。明日の準備のため授業
は午前中で終了し、この日は明日の準備に駆り出されている生徒以外はお昼で下校しなけ
ればならなかった。午前の授業が終ると、女さんや兄友に捕まる前に校舎を出て明日香の
通っている中学に向かった。自宅から歩いていける距離なので一度帰宅して時間を潰して
から、中学の授業が終るくらいの時間に僕は校門の前で待機した。

 明日香は僕が迎えに来たことに喜んでくれるだろうか。少なくとも驚いてはくれるだろ
う。

 僕は明日香の下校時間を正確に知らなかったせいで、結構な時間を校門前で費やすこと
になった。奈緒のピアノ教室前と同じで中学生たちの視線が気になる。結局四十分ほど待
ったところで俯き加減に一人で校門の方に歩いてくる明日香を見つけた。何か考えごとを
しているような様子だ。明日香の悩みは挙げようと思えばいくつだって思いつく。

 入院していて今だに意識不明の池山の容態。奈緒に仕掛けた仕打ちへの後悔。有希への
罪悪感。両親の不和。そして・・・・・・、奈緒や玲子叔母さんと明日香との間でふらふらして
いた自分の彼氏である僕への不安。

「明日香」

 彼女がすぐ近くまで来たところで僕は彼女に声をかけた。俯いていた明日香が顔を上げ
僕を見つけた。僕に気がついた明日香の表情が明るくなるのを見て、学校でのできごとを
忘れるほど胸の奥が温かくなるような感情に僕は包まれた。

「お兄ちゃん」

「おつかれ」

 僕は明日香の方に手を差し伸べた。周囲の生徒たちの視線が集まってくる。珍しく少し
照れたような表情を浮かべて、明日香は僕の手を取った。


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