249:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/06/14(金) 23:41:53.07 ID:pVbkLglno
「あのさ、それって全然浮気じゃないんじゃないの? 兄友はちゃんと有希さんという子
の誘いを断ってるんだし」
僕は少し呆れて彼女に言った。こんなことで疑われている兄友も気の毒だけど、何の関
係もないのに巻き込まれている僕も不幸だ。
「でもね。これまでだって兄友に告ってきた女の子は結構いたんだけど、あいつはほとん
ど無視に近いやり方で振ってくれてたんだよ。それなのに有希って子にはあんなにていね
いに相手をしてた。すごく純真で可愛い子だったし兄友も気になってるんだって思った」
「兄友は何って言ってるの?」
「『盗み聞きしてたなら何もないことはわかるだろ。俺はちゃんと彼女がいるからって断
ったぜ。それなのに何で即浮気認定されなきゃならねえんだよ』って。あいつあたしに謝
りもしないで勝手に逆切れしてるの」
それは逆切れじゃないんじゃないか。まあこんなことで不安になるほど女さんの兄友へ
の想いは深いのかもしれない。ちょっと行き過ぎの気はするけど。
「それで喧嘩しているの?」
「ううん。むかついたけど一応断ってはいたようだから仲直りしてあげたの。そしたらあ
いつ、そんなことよりも一緒に奈緒人に謝ろうぜって。こないだ言い過ぎちゃったからっ
て。あたしも君のことが気になってたんで、うんって言ったんだけど」
「それで今朝校門の前で二人で待ち構えていたのか」
「そうなの。でもあたしがちょっと君のことを気になっているって言っただけであいつ、
また逆切れだよ。君だって見てたでしょ? 兄友のひどい態度を」
「いや、ひどいっていうか」
あれで責められたら兄友がかわいそう過ぎる。僕は女さんの話を聞いてそう思った。女
さんはちょっと考えすぎなんじゃないか。
「それでこれからどうするの」
女さんが僕の方を見た。
「本当はわかっているの。あたしが大袈裟に騒ぎすぎていることは」
何だ自分でも理解できてるんじゃないか。僕はほっとした。少しだけ自分のプライドを
抑えて兄友に謝ればこの二人はすぐにでも仲直りできそうだ。
「それでも少し不公平だと思う。あいつが告られるたびに心配して夜も眠れなくなるのは
いつもあたしだもん。こんなのもうやだ」
「そう言われても・・・・・・。兄友のこと好きなんでしょ」
「・・・・・・うん」
「兄友だって女さんが一番好きだと思うよ。それさえ確かなら不公平とかそういうことは
ないんじゃないかなあ」
「そういうことを平気で言えちゃうのは、君が明日香ちゃんにも奈緒ちゃんにも好かれて
いるからだよ。自分が選べる立場だからそんなに余裕で奇麗ごとが言えるんだよ」
僕が選べる立場? 余裕があるって?
高校生になるまで女の子とろくに話したこともなく、告白されたこともなく、バレンタ
インデーには明日香にさえ何ももらえず、仕事が一段落したかあさんから一週間遅れで義
理チョコをもらえるだけだった僕に余裕がある? 母さんのほかにチョコをくれたのは玲
子叔母さんくらいだ。叔母さんだけは昔から僕のことを気にしてくれてたから。
「選べる立場って・・・・・・それ皮肉? 僕が女性にもてなかったことは君だって知っている
でしょ」
僕は弱々しく言った。この手の情けない話を女の子に話すのは本当に嫌だったけど。
459Res/688.68 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
板[3] 1-[1] l20
このスレッドは過去ログ倉庫に格納されています。
もう書き込みできません。