287:VIPにかわりましてNIPPERがお送りします[saga]
2013/07/04(木) 23:43:42.78 ID:j39CgiDpo
兄貴が一時帰国したことで奈緒人と奈緒は完全に落ち着きを取り戻した。奈緒人と奈緒
は兄貴の帰国前からあたしには気を許してくれるようになっていたけど、兄貴の帰国後は
あたしを完全に味方だと認識してくれるようになった。兄貴があたしに気を許しているこ
とを理解したからだと思う。麻紀さんにネグレクトされた二人は、母親に恐怖を感じた分
だけ兄貴への信頼を深めていたのだった。
兄貴の短い一時帰国の間、兄貴は麻紀さんと接触することを諦めて奈緒人と奈緒の心の
ケアに専念することに決めた。
兄貴とあたしは奈緒人と奈緒を連れて買物をしたり公園で二人を遊ばせたりして兄貴の
短い帰国中を時間を過ごした。
昼食に訪れた屋外にテーブルのあるカフェで、奈緒人と奈緒は迷わず隣り合って座った。
兄貴は兄妹のそんな様子に微笑して黙ってあたしの隣に腰掛けた。
「何食べる? ここってカレーが有名なんだよ。カレーは嫌い?」
「カレー辛い?」
あたしの問いかけに奈緒人と奈緒が顔を見合わせて聞き返した。
「ここのは辛くないよ」
「じゃあ食べる」
二人の元気な声にあたしたちは顔を見合わせて微笑みあった。奈緒人と奈緒はもう大丈
夫だろう。
何か若い夫婦が幼い兄妹と休日のお出かけをしているようだ。あたしは兄貴の笑顔を見
ながらそう思った。兄貴の家庭の非常事態だというのにあたしは奇妙な幸福感を覚えた。
こういうことを考えてはいけないとは思ったけど、もうとうに諦めていた夢が今かなった
ような気がしたのだ。
「ねえ、ママ。このお店のカレーってそんなに美味しいの?」
「ママじゃないのよ。お姉ちゃんって呼んで」
あたしは顔を赤らめた。そして奈緒人は単純に間違えていただけなんだと考えようとし
た。
「お姉ちゃんも違うだろ。叔母さんって呼ばせないの?」
兄貴がよけいな口出しした。
「お兄ちゃんは黙っててよ」
「お姉ちゃんのことママって呼んじゃ駄目なの?」
麻紀さんのことをママと呼びたくないのかもしれない。あたしはそう思った。そしてこ
のときあたしは兄貴とまるで夫婦のように並んで、大切な子どもたちと一緒に過ごしてい
る幸福感に少し酔っていた。
「・・・・・・奈緒人が呼びたいならママって呼んでもいいよ」
「おい、唯」
兄貴が少し慌ててあたしを遮った。
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